米にホップ!
ゼロの町から始める
垣根を越えた自由な酒造り

古民家を改修し、醸造所はガラス張り。飲食も可(要予約)。右から、代表の佐藤太亮さん、醸造責任者の立川哲之さん、蔵人の後藤優希さん、ブランドディレクターのみずきさん古民家を改修し、醸造所はガラス張り。飲食も可(要予約)。右から、代表の佐藤太亮さん、醸造責任者の立川哲之さん、蔵人の後藤優希さん、ブランドディレクターのみずきさん Photo by Yohko Yamamoto

 福島県南相馬市小高区で、2021年2月に佐藤太亮さんが立ち上げた醸造所haccoba(ハッコウバ) -Craft Sake Brewery-の「はなうたホップス」は、東北に伝わるどぶろく製法の花酛(はなもと)がルーツ。

 ホップに黄麹と白麹を使い、爽やかでビター、甘味とうま味が重なる楽しい酒で分類は「その他の醸造酒」だ。

 小高区は東日本大震災後、福島第一原子力発電所から20km圏内にあったため、全住民1万2842人が避難し、住民ゼロの町になった。

 避難指示解除後の新しい町づくりの一員にと、太亮さんはこの地を選んで、IT系企業を経て酒造りで起業した。清酒免許は新規で下りないため、「その他の醸造酒」免許で、日本酒をクラフトビールのカルチャーで捉え直す新しい酒造りを行う。

 一軒家を改修した醸造所は、ガラス越しに酒造りが見学でき、飲食も楽しめる。料理はいわき市出身の太亮さんの妻みずきさんが担う。

 醸造責任者の立川哲之さんは宮城県名取市の佐々木酒造店で酒造りを経験後、造り手募集を知った。

「酒蔵の減った福島県で酒造りをしたかったので即、決心」と哲之さん。

 米は地元農家の根本洸一さんと豊田寿博さんから分けてもらう。2人とも農薬や化学肥料に頼らない農法を実践する熱血漢だ。

「haccobaは、金はないけど、熱はある(笑)。ジャンルの垣根を越えた自由な酒造りで、圧倒的においしい酒を造ります!」と太亮さんと哲之さん。

 ゼロからの町づくりの場で、ゼロからの酒造りが疾走し始めた。

はなうたホップスはなうたホップス
●haccoba -Craft Sake Brewery-・福島県南相馬市小高区田町2-50-6●代表銘柄:はなうたホップス●醸造責任者:立川哲之●主要な米の品種:天のつぶ、雄町(全て福島県産)