「新しい資本主義」の鍵は社会保障、分配の歪みは日本の成長を阻害する「新しい資本主義」実現の鍵は社会保障政策だ。成長の壁になってきた「分配の歪み」を是正するだけでなく、新たな有効需要を生み出す(写真はイメージです) Photo:PIXTA

岸田政権「新しい資本主義」に
求められる本当の新しさ

 発足当初、岸田文雄政権は「新しい資本主義」を掲げ、「分配と成長の好循環」を実現するとして、分配重視の経済運営を目指すとしていた。

 分配が先か成長が先か、が議論になるが、問題はどちらが先かではない。この20年余り、歴代政権による成長戦略はいずれも成果を上げることができなかった。まずはその根本原因は何なのかを考えることだ。

 日本はモノがあふれる成熟社会となり、また人口減少、高齢化などで経済が低成長体質に変わってきた。これまでの経済政策や成長戦略を支えてきた「供給サイドからの経済理論」そのものを見直さないと成長は実現できないということだ。

 それを認識している(であろう)からこそ、「新しい資本主義」を掲げ、「分配の経済学」に軸足を移した新たな成長政策に取り組もうとしているのだろう。

「分配の経済学」とは分配を起点に経済政策や成長戦略を考える経済学ということであり、とするなら、その具体策の中心に位置づけられるべきは「所得再分配による格差是正」を目指す社会保障政策になる。