
香取照幸
生産性や賃金引き上げの鍵は経営者が技術や労働力、資本を使ってイノベーションを起こし付加価値を生み出すかにかかっている。岸田首相が掲げる「構造的賃上げ」実現の真の宛名人は経営者と企業だ。

全世代型社会保障改革の目玉である「一元的・包括的子育て支援制度」の構築では、全ての子育て家族に育児休業と保育サービスを一体化して権利として保障することと財源を社会全体で連帯して拠出することが必要だ。

ロシアのウクライナ侵攻は、戦後国際秩序を支えてきた自由と民主主義という価値観の危機といえる。だが、民主主義を危うくしている要因は格差拡大による社会の不安定化や分断など、民主主義国家の中にもある。

日本の成長の壁は、所得格差や民間部門の過剰貯蓄などの「分配の歪み」だ。社会保障政策はその歪みを是正するだけでなく、健康や保育などの新たな有効需要を生み出し、「分配と成長の好循環」の出発点になる。

総選挙で各党に問われているのはコロナ禍でも浮き彫りになった格差の問題と成長の在り方をどう考え、そして財政をどう機能させるかだ。「バラマキ公約」ではなく責任ある政策論が求められる。

終戦から76年、戦争体験を持つ明治・大正生まれの人たちは年々少なくなるが、コロナ後の社会の立て直しでは戦後復興を支えたこの世代の人間と社会へのリアルな現実認識を学ぶことだ。

中国が強権的な手法で新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めたこともあって「強い指導者」を求める機運が世界で強まる。ポストコロナの世界で民主主義は国際社会の普遍的原理であり続けられるのか。

ウイグル族の人権抑圧問題への日本企業の反応が鈍い。人権問題は今や「グローバルイシュー」であり、企業も世界が直面する問題への姿勢が問われる時代になったことに気づくべきだ。
