台湾のヘビメタバンド「ソニック」のボーカル、フレディ・リムこと林昶佐氏(45)が2016年、立法委員(国会議員)に初当選を果たすと、若者の間では台湾の民主政治にとって新時代の幕開けになるとの希望が生まれた。ところが今、その林氏はリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票に直面している。林氏には境遇を共にする多くの仲間がいる。台湾で過去1年に選出された政治家がリコールに直面するのは林氏で5人目だ。林氏が9日の投票で解任されれば、台湾で顕著になりつつある「リベンジ(仕返し)リコール」とも呼ばれる潮流の犠牲者がまた増えることになる。政治リソースの無駄遣いとの批判もある住民投票だが、それを好む気質を背景にリコールが相次ぐ現状は、中国に対抗し民主主義を守るとりでとされる台湾で、ある論争を巻き起こしている。民主主義の行きすぎが、かえって自らの利益を損なっているのではないか――。