先週、ロシア軍がカザフスタンに展開した。ミャンマーの軍事政権は、アウン・サン・スー・チー氏の刑期を4年分追加した。中国は新疆ウイグル自治区の幹部を、香港に駐屯する人民解放軍部隊の責任者の座に移動させた。これらの動きから明らかになることが二つある。一つ目は、米国の地政学上の敵対諸国が、米バイデン政権のメッセージを意に介していないということ。二つ目は、これまでのところ、人権と民主主義を優先課題に掲げようとするバイデン政権の試みは、民主主義の世界的後退を逆転させることができず、後退ペースを遅らせることすらできていないということだ。その一因は、米国内でのバイデン政権の政治的な弱さにある。しかし、敵対諸国は米国の内政以外の対応をも注視している。米国の政策の一貫性のなさにも着目しているのだ。米政府は、インド太平洋地域で中国とバランスを取ることと、民主化への支持、気候変動対策を、外交政策の最優先課題に掲げている。米国の敵対諸国に加え、一部の友好諸国も、米国がこれらの目標の達成を同時に目指すのは不可能だと考えている。整合性のない諸目的に注力する米国の政策が、最終的に失敗に終わると結論付けている。