ENEOSの和歌山製油所Photo:PIXTA

石油元売り業界最大手のENEOSホールディングスは1月25日、和歌山製油所を閉鎖する方針を決めた。コロナ禍と脱炭素の加速による石油製品需要の減少が決め手となった。ENEOSは、2022年3月期決算で和歌山製油所の閉鎖に伴う減損処理を行う見通しだ。しかしENEOSを襲う“減損爆弾”は、他に二つも残っている。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

和歌山製油所の閉鎖を決めたのは
コロナ禍、脱炭素、そして…

「コロナと脱炭素によって想定を上回る需要減少となっている。(和歌山製油所は)他の製油所に比べて重質油の分解能力が低く、赤字が続いて厳しい」。ENEOSホールディングス(HD)の大田勝幸社長は1月25日の記者会見で、和歌山製油所を閉鎖する理由を硬い表情のまま説明した。

 業界首位の旧JXホールディングス(HD)と3位の旧東燃ゼネラル石油が統合し、2017年に“和製メジャー”として発足したJXTGHD(20年に商号変更、ENEOSHD)は、40年に石油需要が半減する最悪のシナリオに備えて、製油所・製造所の統廃合を進めてきた。

 これまでに室蘭(北海道)と知多(愛知県)の2製造所で生産停止に踏み切り、大阪製油所(大阪府)の精製も止めたほか、根岸製油所(神奈川県)でも一部装置を停止。ENEOSHDは製油所・製造所の再編によって経営の効率化を図り、収益力を強化してきた。

 実のところ、ENEOSHDの中で最も古い1941年操業の和歌山製油所を閉鎖することは既定路線だった。大田社長は「あらかじめ決まっていたわけではない。需要や競争環境をタイムリーに分析してきた」と表向きは否定しているが、ENEOSHD関係者は「JXTGが誕生する際、どこの製油所・製造所を統廃合するかをある程度固めていた。和歌山製油所もその一つ」と明かす。

 では、なぜ今になってENEOSHDは、和歌山製油所の閉鎖に踏み切ったのだろうか。

 次ページからは、和歌山製油所の閉鎖を今になって決めた裏事情をつまびらかにする。また、ENEOSHDに迫る二つの“減損爆弾”についても明らかにしたい。