米インフレ対策、後手に回ったFRBの顛末Photo:Pool/gettyimages

 米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は新型コロナウイルス感染が拡大した1年目、金融・経済のメルトダウンを防ぐ革新的な政策を展開し、金融政策のハト派として高い評価を得た。

 パウエル氏は現在、7.5%という40年ぶり高水準のインフレ率を抑制するために、同様に即興的な措置を取ることをいとわないタカ派に変わりつつある。

 その成否は、経済の先行きとFRBの信頼性を大きく左右することになる。

 方向転換を迫られたのは、FRB自身の行動の結果でもある。パウエル氏は、根強い高失業率と超低インフレに対処するために、前任者たちが編み出した戦略を強化することで、コロナ禍に対応した。労働市場が急回復し、高インフレがより大きな脅威をもたらす段になって、パウエル氏らFRB当局者は意表を突かれる格好となった。

「かなり後手に回っていた。われわれはそうなることを望んでいなかった」と語るのはエリック・ローゼングレン氏だ。昨年9月までボストン地区連銀総裁として、こうした政策の立案に関わっていた。