ウクライナ東部の前線で戦っていた20歳の同国軍兵士は、母親を安心させる言葉を数週間にわたって伝え続けた。だが昨年12月23日、最後となった実家への電話で、戦闘の危険を漏らしてしまった。「とても熱い」。イーホル・ティキナさんは母にこう話した。その4日後、狙撃兵の銃弾が頭部を貫通し、ティキナさんは昏睡(こんすい)状態に陥った。1月1日、故郷から遠く離れた病院で息を引き取った。ウクライナ国民はロシアとの戦争が始まるのを待っているのではない。ロシアが同国に初めて侵攻し領土の一部を奪った2014年から、すでに戦争を強いられている。ロシアはそれ以降、東部ウクライナの親ロ派武装勢力を使って、かつての隷属国であるウクライナを屈服させようと激しい衝突を起こしている。この戦争で少なくとも1万4000人が死亡。ウクライナ経済は巨額の損失に見舞われ、数十万人が家を追われた。