働き方改革やハラスメント防止、多様性の推進など、リーダーが解決すべきタスクは山積みだ。そのような難問をクリアしつつも、チームの士気を高めて成果を出すために、リーダーに求められることとは何だろうか?
リーダーとして迷いが生じたときに役立つのが、グローバル企業・ブリヂストンで社長を務めた荒川詔四氏の著書『優れたリーダーはみな小心者である。』(ダイヤモンド社)だ。
本書では、世界を舞台に活躍した荒川氏が、コンプレックスと捉えられがちな「繊細さ」や「小心さ」を、むしろリーダーが大事にすべき「武器」として肯定している。多くの人を勇気づける内容に、SNSでは「最も心に刺さったビジネス書」「悩んでいることの答えがここにあった」と共感の声が多数寄せられている。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、周囲から嫌われている「好感度の低いリーダー」が口にしがちなセリフをご紹介します。(構成/根本隼 初出:2022年3月24日)
「結果を出せ」という言葉は誰でも言える
「結果を出せ」。リーダーが現場に対して、よく投げかける言葉です。
もちろん、結果を出してはじめて「仕事をした」と言えるのですから、いわんとすることは間違ってはいない。しかし、このモノの言い方に、私は強い違和感をもちます。なぜなら、誰でも言える言葉だからです。
現場に目標を与えて、それを達成しているか否かを管理する。そして、達成していなければ、「結果を出せ」とプレッシャーをかける。それだけなら誰でもできる。誰にでもできることしかやらないで、「結果を出せ」と命令するのはおかしいと思うのです。
解決策を示さない上司に対する現場の本音とは?
「OKY」。これは、私が、それなりの職位に就いた後に、現場のスタッフから聞かされて、強い印象とともに記憶に刻み込まれた言葉です。彼は、本社から「結果を出せ」とプレッシャーを受けていることを明かしたうえで、この言葉を口にしたのです。「お前が来てやってみろ」。頭文字をとって「OKY」というわけです。
目標を達成できていないということなど、現場もわかっている。なんとかしようと思って、一生懸命に働いているわけです。にもかかわらず、解決策のひとつも示さずに、「結果を出せ」と迫る。
だったら、「お前が来てやってみろ」と言いたくもなります。それが現場の本音だということを、改めて印象づけられたのです。
「OKY」と言われたらリーダーは悪代官に成り果てる
そして、こう思われた瞬間に、リーダーは“悪代官”に堕します。
汗水たらして働いている現場からすれば、居心地のいい温室にいながら、「結果を出せ」と油を搾るごとくに迫るのは、現場に圧政を強いる“悪代官”にしか見えないのです。それでは、誰も本気でついていこうなどと思うはずがありません。
さらに、現場から遠い本社部門に“悪代官=役員”が重層構造で過剰に存在していれば、それが“動かしがたい分厚い壁”のように感じられます。これが、実働部隊たる現場の諦めムードを生み、組織全体をレームダック(死に体)に陥らせてしまうのです。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」。旧日本軍の連合艦隊司令長官・山本五十六の有名な言葉にあるように、何よりも、まず「やってみせる」ことができなければ、人は動きません。リーダーシップの原点は「やってみせる」ことにあるのです。
リーダーは「1円」たりとも生み出していない
私はこう考えています。リーダーが現場を指図するのではない。リーダーは現場をサポートしなければならないのだ、と。ほとんどの会社の組織図を見ると、社長を頂点に、現場を底辺に置く三角形の形をしています。これが勘違いのもとなのです。
現実は逆。結果を出し、利益を生み出しているのは、常に現場。実際のところ、リーダーは「1円」たりとも生み出してはいないのです。
だから、その現場こそが組織の頂点であり、それを底辺で支えるのがリーダーだと認識すべきなのです。
(本稿は、『優れたリーダーはみな小心者である。』より一部を抜粋・編集したものです)