「優れたリーダーはみな小心者である」。この言葉を目にして、「そんなわけがないだろう」と思う人も多いだろう。しかし、この言葉を、世界No.1シェアを誇る、日本を代表するグローバル企業である㈱ブリヂストンのCEOとして、14万人を率いた人物が口にしたとすればどうだろう?ブリヂストン元CEOとして大きな実績を残した荒川詔四氏が執筆した『優れたリーダーはみな小心者である。』(ダイヤモンド社)が9月22日に発売される。本連載では、本書から抜粋しながら、世界を舞台に活躍した荒川氏の超実践的「リーダー論」を紹介する。

一流のリーダーは、「繊細さ」を持ち合わせている

 優れたリーダーはみな小心者である――。
 この言葉を目にして、「そんなわけがないだろう」と思われた方も多いのではないでしょうか?しかし、私はふざけているわけではありません。株式会社ブリヂストンに身を置いて、四十余年にわたってグローバル・ビジネスの最前線で戦った経験を振り返りつつ、そう確信しているのです。

 一般に、優れたリーダーは、周囲を威圧するようなオーラを放ち、普通の人にはできないことを大胆にやってのける「図太い人物」というイメージがあるかもしれません。たしかに、ここぞという局面で腹をすえた決断ができることはリーダーの条件。ときには周囲の反対を押し切ってコトを成し遂げるさも求められるでしょう。

 しかし、単に神経が図太いだけでは、真の意味で優れたリーダーになることはできません。むしろ、逆です。実際、私がこれまで接してきた一流のリーダーはみな、「繊細さ」を持ち合わせていました。

 周囲の人々に細やかに気を配り、常にリスペクトの気持ちを忘れない。心配性だからこそ細部まで徹底的に自分の頭で考え抜き、臆病だからこそあらゆるリスクに備えて万全の準備を怠らない。だからこそ、いざというときに決然とした意思決定を下すことができる。そして、その決断を支持する人たちの力を借りながら難局を乗り越えていくのです。