ロシアとウクライナの紛争、そして予想外に強力な西側の反応は、中国にどう見えているのだろうか。エネルギー面では長期的に有利に働く可能性があるが、金融面では大きな懸念がある。中ロ同盟の芽生えはともかく、欧米による制裁をロシアに有利な方向に弱めようと、中国が全力を尽くす公算は小さい。中国自身の技術・金融の覇権を脅かすリスクがあるからだ。中国はこの先、同様の協調制裁を受ける可能性から身を守る動きを強めるだろう。だが、人民元の高度なコントロールを維持する意欲は、引き続きその妨げとなる。ウクライナ侵攻以前から、この危機が世界のエネルギー供給に及ぼす影響は拡大しつつあった。五輪開催中の2月上旬、中国とロシアは新たなパイプライン「パワー・オブ・シベリア2」に関する合意を結び、中国へのパイプラインによる天然ガス供給計画を2020年代後半までに合計約480億立方メートルに引き上げることになった。この合意では、ユーロでの支払いが規定されている。ただ、ロシアの金融面の孤立によって必要となれば、人民元に変更することも可能とみられる。中国政府からすれば、それはさらなるプラスとなる。ブルームバーグが報じているように、一部の中国の銀行は欧米の制裁に違反することを恐れて、ロシアの資源取引への融資に慎重になっているが、世界経済全体への影響を軽減するため、ロシアのエネルギー取引を制裁の対象外とする規定が引き続き採用される可能性が高そうだ。