日米欧の政府が、ロシア中央銀行の資産を凍結する制裁は、かなり大きなインパクトを持つ。ロシア主要銀行が、国際的な金融システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外されたのをきっかけに、ルーブルは急落した。今後、世界的にどんな経済・金融危機が起きるのか、あらゆる可能性を考えてみたい。当然ながら、日本人も決して他人事ではない。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
ロシア通貨ルーブルの急落
社会と経済は混乱、国民の不満は増大
ウクライナでのロシア軍とウクライナ軍の戦闘は続いており、世界の政治・経済・安全保障体制が急激に変化している。世界的にロシアのプーチン大統領に対する批判が高まっており、米欧主要国によるロシアへの経済・金融制裁がかなり強化されている。
中でも、日米欧の政府が、ロシアの中央銀行の資産を凍結する制裁は、かなり大きなインパクトを持つ。ロシアの主要銀行は、国際的な金融システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外された。これに伴い、国際市場で通常の取引を行うことが困難になった。
そのため、ロシア通貨のルーブルは大きく売り込まれた。2月28日、アジア時間の外国為替市場では制裁への懸念が急上昇し、一時、ルーブルは米ドルに対して3割程度も急落した。同日、ロシア中銀は通貨防衛のために9.5%から20%への大幅な利上げを余儀なくされた。
しかし、ロシア中銀の資産が凍結されたため、ロシア中銀がルーブル下落を食い止めるための介入が実施できなくなった。ルーブルの下落圧力は強い。通貨価値の急落によってロシアは急速なインフレ率の上昇に直面し、社会と経済は混乱に陥りつつある。
これから、ロシア国内銀行の経営はかなり難しくなるだろう。国民の不満は増大するはずだ。ロシア国内でも、プーチン大統領への反対デモが起きているという。ウクライナ侵攻は、既にウクライナとロシア間だけの問題ではなくなった。今後、世界的にさまざまなことが起きるだろう。それは、われわれ日本人にとって決して他人事ではない