痩せたい、熟睡したい、賢くなりたい、ストレスに強くなりたい…。人類の生活環境が激変するなかで、現代人はかつてなく多様な悩みを抱えるようになった。本連載では、全米で話題沸騰中、国内では本年3月に発売となる書籍『EAT 最高の脳と身体をつくる食事の技術』の内容から、あらゆる頭痛のタネに対して”食に関する最新の知見”から有益な情報をお伝えしていく。

「脳が整い、思考力が高まる」おすすめ食材ベスト3Photo: Adobe Stock

脳の“衛生状態”を改善しよう

 私たちの社会で「衛生」というと、一般に清潔さのことを指し、健康の維持や病気の予防をはじめ、単に臭わないようにすることも含まれる。

 脳にも満たすべき衛生基準があるが、脳はふつうにしていては見ることができないし(脳の画像撮影機器を持っている人は除く)、臭いを嗅ぐことは絶対にできない。

 ここでは、”衛生状態の確認が難しい脳”をピカピカですっきりと片づいた状態に保つのに適した食品をいくつか紹介しよう。

 いずれも脳の衛生面をサポートし、思考力を高める効果が期待できる。

▼ターメリック
 ターメリックには優れた抗酸化作用があるが、それに加えて、衛生状態を強化する作用もある。

 南カリフォルニア大学医学部神経学科の研究から、ターメリックに含まれる活性成分(クルクミン)にアミロイド斑の排除を助ける作用があるほか、神経細胞の老化を遅らせ、重金属を見つけ出し、脳内の炎症を抑制する力があると判明したのだ。

 クルクミンについては、脳の免疫システムの最前線で働く在住マクロファージ細胞の機能を改善する力があることもわかった。

 これは実に重要な情報だ。在住マクロファージ細胞は、脳の“招かれざる侵入者”を引っ張り出して脳を死守する。

 この細胞は、脳のメンテナンス全般にかかわり、中枢神経系を絶えず掃除している。損傷している、あるいは不必要な神経細胞やシナプスをはじめ、あらゆる感染性因子を一掃する。

 こうした夢のような特徴を備えていることから、ターメリックには「記憶の機能を改善する力がある」と複数の研究で言及されている。

 衛生面に関してクルクミンが行う仕事を最後にもうひとつつけ加えると、『プロズ・ワン』に掲載されていた研究を通じて、クルクミンには神経可塑性を改善し、新たな脳細胞の創出を促す力があることもわかっている。

▼クルミ
 クルミに含まれる化合物は、有害なアミロイドベータペプチドを脳から取り除く一助となることが実証されている。アミロイドベータペプチドは、アミロイド斑の増加を招く。

 科学ジャーナル『ニューロケミカル・リサーチ』に掲載されたデータによって、クルミには酸化ストレスや炎症を抑制し、脳細胞の早期の死滅を防ぐ力があると証明された。

 また、クルミには脳を健やかに保つビタミン、ミネラル、脂肪も豊富に含まれている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校が近年発表した研究では、ひとつかみのクルミを毎日食べると、記憶力、集中力、脳の情報処理速度が高まることが示唆されている。

▼シナモン
 カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究を通じて、シナモンに含まれるファイトニュートリエント(植物性栄養素)には、脳内に見受けられるタウタンパク質の”もつれ”をほどく作用があるとわかった。

 そうした神経原線維のもつれは、アルツハイマー病の重要な指標のひとつとされている。シナモンには、そもそももつれを起きづらくさせる作用があるほか、酸化ストレスを抑制し、神経細胞の状態全般を改善する効果も期待できる。

 また、『ジャーナル・オブ・ニューロイミューン・ファーマコロジー』には、シナモンの海馬の可塑性を促進する作用により、学習課題を習得する速度が向上することを発見したという研究が掲載されていた。

 シナモンは飲み物や料理に手軽に加えられる。スムージーやコーヒー、オートミール、甘辛く味付けした鶏肉料理や豚肉料理、スイートポテトなどによく合う。摂取量は少々で十分なので、一日あたりティースプーン4分の1杯の摂取を目指そう。