痩せたい、熟睡したい、賢くなりたい、ストレスに強くなりたい…。人類の生活環境が激変するなかで、現代人はかつてなく多様な悩みを抱えるようになった。本連載では、全米で話題沸騰中、国内では本年3月に発売となる書籍『EAT 最高の脳と身体をつくる食事の技術』の内容から、あらゆる頭痛のタネに対して”食に関する最新の知見”から有益な情報をお伝えしていく。

全米ベストセラー書が解説!<br />腸内細菌が”大喜びする”食材ベスト3Photo: Adobe Stock

腸内細菌を喜ばせよう! 

 腸内細菌は「プレバイオティクス(オリゴ糖に代表される腸内の微生物の餌)」を餌にすると、喜んでその場にとどまりたくなり、代謝に大きく貢献してくれる。

 細菌も人間と同じで、好みの食材はそれぞれ異なるが(つまり、食べるものの多様性が腸内細菌の多様性に直結する)、腸内細菌を満足させたいなら、次に紹介するものを食事に加えるといい。

▼リンゴ
「一日一個のリンゴは医者いらず(An apple a day keeps the doctor away)」という格言があるが、リンゴ(と梨)が格言に使われたのは、「ペクチン」が豊富に含まれているからだ。

 ペクチンは、科学ジャーナル『BMCマイクロバイオロジー』で優秀なプレバイオティクスのひとつと評されていて、これがあることで、腸内細菌は非常に重要な短鎖脂肪酸であるブチレートの生産が可能になる。

 ブチレートは炎症を抑えて大腸内の腸細胞にエネルギーを供給する一助を担うことがわかっている。

 また、「プロピオネート」と呼ばれる短鎖脂肪酸には、炎症の抑制に加えて内臓脂肪を減らす効果まで期待できる!

 リンゴに加えて、ニンニク、タマネギ、チコリの根、ヒカマ(クズイモ)、キクイモ、アスパラガスにも、プロピオネートの産生を助けるプレバイオティクスが豊富に含まれている。

▼アスパラガス
 この緑の槍状の野菜は手に入りやすく、プレバイオティクスの一種である「イヌリン」と呼ばれる食物繊維が豊富に含まれている。

 科学ジャーナル『ガット』に目をみはる記事が掲載されていた。それによると、イヌリン由来のプロピオネートは、PYYとGLP-1の分泌を大幅に増加させることが判明したという。どちらも満腹と代謝を調節する際の主力となるホルモンだ!

 近年では、イヌリンの別形態である「フラクトオリゴ糖」が話題にされることが増えた。こちらもアスパラガスに含まれているほか、ポロネギ、タマネギ、バナナにも含まれる。

 ただし、バナナは柑橘類やベリー類といったほかのよく食べられている果物に比べて糖質も多く含まれているので、その点は気をつける必要がある。

 誤解しないでもらいたいが、朝食やおやつにタルトを食べるくらいなら、熟したバナナのほうが身体にいい。

 しかし、ホルモンや内分泌腺の状態によっては、バナナにウキウキしないほうが賢明かもしれない。ついでに言うと、バナナは青みが強いものほど「難消化性でんぷん」が豊富に含まれている。

 スムージーに青いバナナを半分加える、青いバナナを原料にしたバナナパウダーを料理に使うなどすれば、腸内フローラが元気になり、代謝が促進されること請け合いだ。

▼ココア
 科学ジャーナル『ジ・アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』に、「ポリフェノールが豊富なココアは人体に高いプレバイオティクス効果をもたらす」ことを実証したランダム化二重盲検比較試験が掲載されていた。

 試験の参加者が、無加糖のココアフラバノール飲料を4週間飲み続けたところ、ビフィズス菌と乳酸菌の比率は大幅に増加し、クロストリジウム(脂肪の増加に関係する)の数は大幅に減少したのだ。

 こうした細菌の変化と並行して、血漿トリグリセリド(血中脂肪)とCRP濃度の大幅な減少(炎症が軽減されたことの示唆)も見受けられた。

 これでまた、健康に関する記事の見出しにチョコレートが使われ続ける理由が増えた。とはいえ、これだけははっきりさせておきたい。ここで言うチョコレートに、チョコ菓子は含まれない。

 先の試験が示唆するのは、すべてのチョコレートの源で、もっとも純度の高い形態のチョコレートである「カカオ」のタネに、健康効果があふれんばかりに秘められているという点だ。

 無加糖のココアパウダーはカカオパウダーを高熱処理したものであり、高熱にさらされたカカオからはいくぶんかの栄養素が失われるが、研究によると、それでもシェイクやお茶に容易に加えることができるので、ポリフェノールの素晴らしい供給源であることに変わりはないと言える。

 カカオをはじめとする食品に含まれるポリフェノールは、プレバイオティクスの相乗効果をもたらすようだ。ポリフェノールは植物から自然に生じる化合物で、総じて紫外線放射や病原体の攻撃から身体を守る役割を果たす。

 最新データによると、食事を通じて小腸に直接吸収されるポリフェノールはたったの5~10パーセントで、残りは結腸に向かい、そこで善玉菌に活用される。

 ココアに加えて、ポリフェノールが豊富な緑茶やオリーブオイルも腸内にいる善玉菌を元気づけることがわかっている。

 マイクロバイオーム[腸内の多様な微生物の集合体]を改善する目的で、ありとあらゆるプロバイオティクス(微生物)のサプリメントを摂取するのもいい。だが、そうやって体内に善玉菌を取り込んでも、菌の好きな餌を与えないことにはあまり長くとどまってくれない。

 この点は絶対に忘れないでほしい。マイクロバイオームを再編できるかどうかは、プレバイオティクス(微生物の餌)にかかっていると言っても過言ではない。