2012年も押し詰まってきて、残すところ後わずかです。

 年の瀬といえば、忘年会があって御用納めがあります。それから、最近では年の瀬の風物詩といえば、趣向をこらした様々なコンサートです。大晦日から新年にかけてオールナイトで行われる公演も珍しくありません。ポップス、ロック、ジャズ、クラシックとジャンルも多彩です。行く年を慈しみ来る年の幸運を願う時に、音楽のチカラは格別なのでしょう。そんな年の瀬の多彩な音楽中でも特別なのは、やはり「第九」です。

 と、いうわけで、今週の音盤はベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」作品125です。

 「第九」と言えば、交響曲の最高峰です。それ故、実に多くの名演・名盤がありますが、今週の音盤に選んだのは、フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団にシュワルツコップらの独唱陣による録音です(写真)。

 1951年7月、第二次世界大戦のため長らく中断されていたバイロイト音楽祭が戦後初めて開催されますが、この音盤はその時の実況録音です。人類史上最悪の破壊と殺戮、それに起因する筆舌に尽くし難い悲哀と苦悩。それらを乗り越えて、平和と復興を思い、歓喜を共有する。それこそベートーヴェンが構想し作曲した「第九」でした。数多ある古典的名曲から選択されたのが「第九」であったのは、極自然でしたし必然であったとも言えます。