業界で最も業績の高い企業を、しっかり観察して、自社とどこが違うかを分析する。業績のベンチマークは1つの方法だが、理念や商品デザイン、バリューチェーンにおいてどこにフォーカスして事業を行っているか、いろいろな点をチェックする。

 その上で、自社は、どこで差別化できるかを、徹底的に考え抜き、実効する。例えば、製品開発なら、顧客が求める機能だけを追及して、その他の比較的重要でない機能は外してしまうといったことだ。

──規模が大きくなると経営が複雑化する問題や、各事業で徹底的に差別化を図ることなどを考えると、一人の経営者が多くの事業について指示する多角化経営は難しいように思える。とは言え、例えば米国でも、GEでは製造業と金融業というように構造がまったく異なる事業を複数経営して好業績だった企業がある。

 個別企業についてのコメントはできない。ただ、どんなことにも例外があるとは言える。

 米国では、成功している多角化経営の企業は少なくなっているが、それでも成功している企業を見ると、大きく2つの特徴がある。

 1つは、事業の組み替えを頻繁に行っているということだ。市場環境が変わったり、自社の事業の競争力がなくなったり、自社内でのシナジー(相乗効果)が生まれなくなったりしたら、即座に、その事業を売却している。

 もう1つは、そうした変化を見逃さないように、パフォーマンス管理をきちんと行っていることだ。目に見える業績管理はもちろんだが、わずかな変化も見逃さないようにしている。そのためには、繰り返しになるが、事業に対する深い知見が経営者に必要になるのだ。

──変化に対応して、適宜、事業の組み替えを実践する。そういうことが競争優位の確立や維持に最も影響するとなると、経営者こそ、最も重要な経営資源ということになる。

 確かにそうだが、本書に克明に著した通り、今日の企業経営で問われるのは、「誰が経営しているか」ではなく、「どのような仕組みで経営しているか」だ。

 すなわち、スピーディに、的確な判断を下せる経営体制を築くことが大切だ。チームで経営し、そのメンバーの質を担保する体制が欠かせない。

週刊ダイヤモンド