鹿児島県唯一の百貨店「山形屋(やまかたや)」(2012年10月撮影) 鹿児島県唯一の百貨店「山形屋(やまかたや)」(2012年10月撮影) Photo:PIXTA

鹿児島県唯一の百貨店である「山形屋(やまかたや)」が借入金の返済に行き詰まり、グループ会社16社とともに私的整理の一種である「事業再生ADR手続き」に入っていることがわかった。複数の関係者が認めた。(東京経済東京本部長 井出豪彦)

事業再生ADR手続きを
申請したのは昨年12月

 山形屋は宝暦元(1751)年、出羽国山形出身の源衛門により創業された。安永元(1772)年に薩摩藩の商人招致を知り、鹿児島城下木屋町(のちの金生町)に呉服店を構え、「山形屋」と称したという。大正5(1916)年にルネッサンス式鉄骨鉄筋コンクリート(地下1階~地上4階)の新店舗が落成し、翌年「株式会社山形屋呉服店」として法人化された。

 地元では押しも押されもせぬ名門企業である。現在の会長である岩元純吉氏(56)と社長である岩元修士氏(54)は兄弟で、共に慶応大学を出て伊勢丹(当時)で修業した。ただし、三越伊勢丹ホールディングスとの資本関係はない。

 周知の通り、地方都市で百貨店の経営環境は厳しい。鹿児島では2009年に三越が撤退した。クルマ社会では大規模な駐車場を備えた郊外型ショッピングモールの集客力が圧倒的だ。さらに20年からの新型コロナウイルス禍がダメ押しとなり、業績の悪化から資金繰りがつかなくなった。

 関係者によれば、23年5月にメインバンクである鹿児島銀行が主導する形でバンクミーティングを開催し、借入金の返済を一時停止して、事業再生ADR手続きに入る方向性が銀行団に示されたという。翌月以降、鹿銀が優先弁済を受ける権利のある「プレDIPファイナンス」として当座の運転資金約25億円を貸し出した。その後、23年12月に経産省認可の第三者機関である「事業再生実務家協会」に正式にADR手続きを申請し、受理された。