『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
以前、思想家エミール・シオランの「生にはなんの意味もないという事実は、生きる理由の一つになる。唯一の理由にだってなる。」という言葉をリツイートされていましたが、人生にはやはり意味なんかないのでしょうか?
「人生は無意味だ」という思考はヒトに問題解決能力がある証拠です
[読書猿の回答]
人間には「人生は無意味だ」と考える能力があります。この能力は、問題状況を俯瞰し自分自身を一登場人物として見下ろすことができるもので、人間の問題解決能力を支える重要なものです。
我々は問題を解いたり、最悪でも離れることで、問題の外に出ることはできますが、しかし人生の外に出ることはできません。渦中にある当事者でありながら人生に対してメタ的/客観的な観点を取ることができる能力と、決して人生から解放されない事実のギャップは、人に自身の矮小さを気付かせます。
対処法は3つあります。
条件反射的な生き方に専念して人生をメタ的に眺めることをやめること。
あるいは超越的な視点にとどまり現世的な生き方を放棄すること。
どちらでもない3つ目は、人が進化の過程で獲得した、自己を超越して状況を俯瞰できるこの能力をその副作用ごと受け止めて生きること。
俯瞰能力を駆使しこの世の問題を解決しながら、俯瞰能力が教える人生の無意味さを、進化がこの能力とともに与えるギフトとして、あるいは人生を豊かなものとしても無意味なものとしても生きることができる権利として、受け入れること。