NHK「あさイチ」で「おとなの勉強」特集が放送されるなど、「おとなの勉強」が注目されています。その火付け役ともいわれる『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』。 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(初出:2021年11月15日)
[質問]
もう何年も勉強してない、仕事や子育てで忙しくて本も読んでない……そんな人でも、独学をはじめると、何か良いことがあるでしょうか?
[読書猿の回答]
それはもう、いっぱいあります。まず「自分を馬鹿にすること」を止められます。今の自分よりもちょっとましな自分になる可能性が開けるし、未来や自分自身に期待することだってできる。知識や技能が身につけば、人生の選択肢は広がるし、何より自分に自信を持つことだってできる。
何もしないで自己評価を高めるのは不可能です。あるいは人生を変えたいと思っても何からやればいいか分からない。でも学ぶことなら今日から、たった今から、始めることができる。その歩みはゆっくりですが、一歩一歩はとても具体的で、確実に前に進むのが実感できます。
独学にはいろいろなノウハウやコツがありますが、それよりはるかに大切なことがあります。「まず始めること、そして続けること」です。「続けること」の中には、途中で挫折しても、また性懲りもなく、再開することが含まれます。
ちょっとでも始めてみれば、開始前には「大変そうで自分には無理」と思っていたことも、「簡単ではないけれど、不可能とまでいかない」と見積もりが訂正されます。また、やりかけのことは切りのいいところまでやってしまいたいと思うのが人間の仕様です。つまり着手すれば、この仕様がある程度までモチベーションを引っ張ってくれます。
途中でやめてしまっても、世界が終わるわけじゃない。また再開すればいいんです。1年は365日しかないので、300回くらい挫折しては再開することを繰り返してたら、ほぼ毎日独学を続けたのと同じになりますよ。
最後に「おとなの勉強」におすすめの本を5冊紹介します。
●『独学大全』
お守り兼アドバイサー代わりに、自分の書いた本で恐縮ですが『独学大全』を。大抵の勉強本を上回る厚さですが、独学をするにあたって直面する様々な問題や困難、必要な技術や情報をほぼすべて詰め込んであります。「困りごと索引」や普通の索引を充実させたので、困る度に必要な箇所を読んでください。
●『独学大全公式副読本』(電子書籍限定)
『独学大全』の一周年に『副読本』を出しました。独学をするにあたって出てくるよくある質問や、さらに色んな分野を学びたいと思った人のために12分野を解説してあります。
●『思考力改善ドリル』
教え導く人が求めがたい独学は独善に陥りがち、と心配される方のために、『思考力改善ドリル』をおすすめします。人が陥りがちなバイアスや落とし穴を、ドリル形式で体験し対応力を身につける本です。
●『現代文解釈の基礎』
現在は動画などでも学ぶことができますが、ある程度、独学を続けていけば、自分で本を読むことが不可欠です。読む能力が高いほど、独学は有利になります。読む力を高めるのにうってつけなのが『独学大全』でも紹介した『現代文解釈の基礎』です。ずっと入手困難でしたが今秋、復刊しました。
●『英語のハノン 初級』
学びなおしたい分野で一番多いのは英語だと思います。『独学大全』が出た後に刊行されたので、その中では紹介できませんでしたが、『英語のハノン 初級』を強くおすすめします。もし1日15分間時間が捻出できるなら、この本に全て投資してください。学校で英語を学んだことがある方なら、これだけをやり込めば相当なレベルまで連れて行ってくれるはずです。