いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

業績目標を同じように達成したのに「評価が低い人」と「高くなる人」を分ける決定的な差Photo: Adobe Stock

ミッション・ビジョン・バリューと業績目標が一貫しているか

最近、私が東大金融研究会のメンバーたちと「自分たちの頭で考えている」テーマの1つが「組織論」です。

東大金融研究会は私と2人の学生で2019年12月につくった研究会です。当初は東大生を対象にしており、「手弁当で運営する東大のMBA」のような存在を目指していました。しかし東大生だけで活動しているとメンバーの多様性が担保されないことに気づき、他大学の学生や若手社会人まで対象を広げて現在に至ります。

現在ではだいぶバランスのとれたグループになってきたと感じますが、メンバーが増えるにつれ、「東大金融研究会はそもそも何のための組織なのか」という議論が起きるようになりました。

そこで考えたのが、企業がミッション・ビジョン・バリューを策定するように、東大金融研究会もミッション・ビジョン・バリューを定めることです。

ミッションとは「存在意義・思想」であり「どのような社会をつくるために存在しているのか?」を言語化したものです。ビジョンはミッションを実現するために設定する組織としての「将来目指す姿・目標」にあたります。そして、バリューはビジョンを成し遂げるためにメンバーが持つべき「価値観・行動指針」を示します。

このミッション・ビジョン・バリューについて考え、議論を進める中で気づいたのが、企業における「業績目標」と「ミッション・ビジョン・バリュー」の関係です。

株式会社は株主に報いなければなりませんから、当然ながら達成すべき業績目標があります。そこで「ミッション・ビジョン・バリュー」と業績目標の関係を考えると、日本企業の場合はこれらが完全に切り離されているケースが多いのです。

しかし本来、「ミッション・ビジョン・バリュー」と業績目標は一体で考えられるべきものだと思います。

実際、外資系企業で「ミッション・ビジョン・バリュー」が機能している会社について調べると、業績目標を達成するにあたってその方法が「ミッション・ビジョン・バリュー」に則っているかどうかが問われています。

たとえば、「ミッション・ビジョン・バリュー」の中に「チームで働く」という内容が入っている場合を考えてみましょう。

ある期の個人の業績目標として、「1人3社の契約を獲得する」と設定されているとします。

そして、高い能力を持つAさんが早々に3社の契約を獲得する一方、Bさんはなかなか契約を獲得できず、先輩に同行してもらったり同期に資料づくりのアドバイスをもらったりしながら、期末ぎりぎりになんとか3社目の契約にこぎつけたとします。

この場合、3社の契約という結果はAさんとBさんで変わりません。

ただし、「チームで働く」ことを実践して業績目標を達成したのはBさんです。

ですからこの企業では、Bさんのほうが高く評価されることになります。ボーナスの査定は同じかもしれませんが、役職が上がるのはBさんです。

私は、このように「ミッション・ビジョン・バリュー」が企業の存在意義からビジネスのやり方まで一気通貫している企業こそが、事業を通じて真に「ミッション・ビジョン・バリュー」を体現できると思います。

ともすれば日本では「ミッション・ビジョン・バリュー」はお題目になりがちです。

「ミッション・ビジョン・バリュー」と「具体的に従業員がどのように仕事をするのか」が結びついていればこそ、「ミッション・ビジョン・バリュー」に共感する人材が集まります。そして、その企業らしい事業活動が展開され、企業の存在意義を果たすことによって業績目標も達成されるという理想的な結果につながっていくのです。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)