いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。
「仕事量=力×距離」がビジネスに当てはまる
金融の世界は、他人から集めた膨大な資金を扱ってビジネスをし、レバレッジ(てこの原理)により大きく稼ぐのが特徴といえます。
このため他の業界と比べて1人当たりの利益は大きくなりやすく、金融業界の給与が高いのもそこに起因しているのではないかと思います。
しかし今から5年ほど前、ふと「仕事の定義は何なのか」と思ったことがありました。
NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』をぼんやりと見ていて、金融業界の自分の身の回りの人たちを「人間的にすごい」と思う機会があまりないことに思い至ったのです。
そこからしばらく「仕事の定義」について考えを深めた私が最終的に行き着いた答えは、中学校の理科で習う「仕事量(ジュール:J)」の公式がすべてだということです。
理科では、物体に力を加え、その力の向きに動かしたとき、力は物体に対して「仕事」をしたといいます。
「仕事量=力×距離」
力は「質量×加速度」なので、式は次のように書くことができます。
「仕事量=質量×加速度×距離」
加速度を固定とすると、仕事量は、重さ(質量)と距離を掛け合わせたものということになります。つまり「重いものをどんどん巻き込むほど、仕事量は増える」のです。
これはビジネスにおける「仕事」でも同じです。
では「重さ」とは何かというと、「1人の人間の存在感の重さ」と「より多くの人が集まる重さ」と考えることができます。
「距離」とは、影響の範囲のことです。たとえば、社内より社外、業界内より業界外、国内より世界など、影響を与える範囲が大きくなるほど仕事量は大きくなります。
「人間の存在感の重さ」というのは、三流の人間よりは二流の人間のほうが存在感が重く、二流の人間よりは一流の人間のほうが重く、一流の人間よりは超一流の人間のほうが重いということです。
つまり「なるべくその道のプロを巻き込むべきだ」ということになります。
「より多くの人が集まる重さ」というのは、単純に人数の問題です。たとえば10人よりは100人、100人よりは1000人、1000人よりは1万人のほうが重いということになります。
このように考えると、仕事量は「より多くの人を巻き込むこと」と「なるべく存在感の重い人、一流の人を巻き込むこと」によって増やせるわけです。