いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

「年収600万円」から「年収800万円」への転職は本当に喜ぶべきか?Photo: Adobe Stock

給料が安いと思っている人は、自分の「適正な給料」を答えられるか

キャリアを形成していくうえでは転職も1つの選択肢です。私はポジティブな転職には大賛成の立場ですが、転職するにあたっては「自分の市場価値」を知っておく必要があると思います。

たとえば、いまの会社の給料が年600万円だとしましょう。転職を検討して年収800万円を提示されたとき、どのように判断すべきでしょうか?

自分の市場価値を考慮しなければ「200万円も上がるなら嬉しい」と思うでしょう。しかし「自分の市場価値は900万円だ」とわかっていれば、800万円の提示では「まだ低い」となります。

また、自分の市場価値が900万円であるならば「いま600万円で働いているのはなぜか」についても考えます。すると、「経営者からかわいがってもらっているし、やりたい仕事をやらせてもらえて吸収できることも多いので600万円でも満足できている」といった分析もできます。

企業の人事担当者と話をすると、会社員のほとんどが「いまの自分の給料は安い」と感じていることがわかります。

しかし給料への不満を言う人たちの多くは、「自分の給料はいくらが適正なのか」と聞かれても答えられないのではないでしょうか。自分の市場価値もわからないまま「給料が安い」というのはおかしいと思います。

基準を持たないまま給料に不満を感じている人は、先の例でいえば800万円の提示でも「今より給料が上がるから」という理由で転職したりしがちです。

そこには、「いま満足できている条件を捨て、実は自分の市場価値より低い年収で転職することが、多大なエネルギーをかけて新しい職場に馴染んだりするコストも考え合わせたときに割に合うのか」という視点が欠けています。