プーチン大統領ロシア軍を予想外に弱体化させた、プーチン政権の「深刻な汚職」の実態とは Photo:Contributor/gettyimages

193の国が参加する国連総会は7日、ロシアのウクライナ侵攻に対する緊急特別会合を行い、国連人権理事会においてロシアが保持していた理事国というステータスを剥奪することを決定した。ウクライナにおけるロシア軍の活動状況がよく分からない中で、一部のロシア軍が市民の虐殺を含む戦争犯罪に手を染めていたことが判明すると、国際社会はロシアに対してより強い姿勢を見せるようになった。ロシア軍は人権侵害以外にも組織的な略奪が問題視されており、ウクライナの民家から盗まれるものは、貴金属類から食料、さらには洗濯機などの家電製品まで多岐にわたる。まともな国の軍隊として機能していないようにも思えるロシア軍だが、軍としての能力にも疑問がある。ロシア大統領府のペスコフ報道官は同日、「ウクライナでの作戦で多くの兵力が失われた。これは大きな悲劇だ」と異例のコメントを発表した。ロシア軍に何があったのだろうか?今回は「汚職」という視点から考えてみたいと思う。(ジャーナリスト 仲野博文)

ロシア軍がウクライナで
撤退を続ける3つの理由

 ベラルーシの反体制派ジャーナリストのハンナ・リュバコワ氏によると、ロシアの民主活動家ナワリヌイ氏に関するジョークが、ロシアと同盟関係にあるベラルーシで今はやっているそうだ。ジョークを訳すとこんな感じになる。

「ナワリヌイはロシア国内で汚職や腐敗を一掃するための戦いを続けてきたけれど、今のロシア軍の状態に目を向けると、ナワリヌイが汚職との戦いに勝利しなくて本当によかった」

 この数年で10万人規模の反政府デモが複数回行われ、現在も多くのデモ参加者が「政治犯」として拘留されているベラルーシでは、隣国ウクライナへの軍事侵攻に反対する若者も少なくない。ロシアで同様のジョークが流行っているのかは不明だが、「欧州最後の独裁者」と評されるルカシェンコ大統領や腐敗した政府に憤る市民の間で話されているジョークだという。

 ジョークに出てくるナワリヌイ氏は、昨年1月にドローンで撮影した黒海沿岸のリゾート地にある豪華な宮殿の様子をユーチューブに投稿し、数千億円の建設費が投じられた宮殿の所有者はプーチン大統領だと主張している。