痩せたい、熟睡したい、賢くなりたい、ストレスに強くなりたい…。人類の生活環境が激変するなかで、現代人はかつてなく多様な悩みを抱えるようになった。本連載では、全米で話題沸騰中、国内では本年3月に発売された書籍『EAT 最高の脳と身体をつくる食事の技術』の内容から、“食に関する最新の知見”にもとづく有益な情報をお伝えしていく。

“うんち、おしっこを含む廃水”から再生産される「水道水」を飲む超リスクとは?Photo: Adobe Stock

水道水に含まれるもの

 アメリカで水道水を飲んでいるという人は、AP通信が発表したレポートに興味があるのではないか。

 それによると4100万近くのアメリカ人が、有害な医薬化学物質を含んだ水を飲んでいるという。

 カリフォルニア南部からニュージャージー北部までのさまざまな水道環境を調べた結果、抗うつ剤、鎮痛剤、ホルモン補充治療薬など、56 種類の医薬化学物質が見つかったのだ。

 検出された量はごくわずかだが、水道水に含まれていたことは間違いない。

 そのようなことが起きた経緯に興味がある(だがその濁った水にかかわりたくない)という人のために説明すると、人々が近年そうした薬を服用するようになり、彼らの代謝の副産物(つまりは彼らが排泄するうんちやおしっこ)が給水源に戻ってくるようになったのだ。

 廃水(トイレ、シンク、バスタブなどで使った水)をいくら入念に処理しても、現状のシステムでは人々が使う最新の化学製品や摂取する薬のすべては完全には排除されない。

 廃水は処理されたのちに川や海に流されるので、遠回りだが結局は給水システムに戻ってくる。

 あるいは、農業で使うかんがい用水、工場用水、トイレで流す水として、地下水の水源として、さらには飲料水にそのまま使われることもある。

 たしかに、一部の水の専門家は、再生された廃水は安心して飲むことができると断言している。その水が、ニーズの高まりを解決する策のひとつになると考えているのだ。

 だが私はそれ以上に、再生された廃水が人々に好まれているようだと知って驚愕した。

 カリフォルニア大学リバーサイド校とサンタバーバラ・シティ・カレッジの研究者が目隠し味覚テストを実施したところ、従来の水道水より再生された廃水の味を好む人のほうが多いと判明したのだ。

 この実験は科学ジャーナル『アペタイト』に掲載されていたもので、ボトルに入った水、蛇口から出した再生された廃水、蛇口から出した従来の地下水をどれがどれかわからない状態で143名に飲ませ、それぞれの味の評価を尋ねた。

 すると、ほとんどの人が再生された廃水がいちばん美味しいと評価した。その水は、「トイレから蛇口にきた水」と呼ばれるものだ。

 みなさんはどうか知らないが、こういう話をすると、私は唐突に喉の渇きを感じなくなる。

 真面目な話、現時点ではまだ市政機関の常識とはなっていないが、水道水を飲んでいる人は、はっきりとはわからない疑わしいものを除去できる強力なフィルターを設置するといいかもしれない。

 水道用のフィルターを使わないなら、あなた自身がフィルターになるしかない。

 RO(逆浸透)浄水システムはよくできていて、非常に目の細かい膜(約0.0001ミクロン。ちなみに細菌の大きさは0.4ミクロンで、残留薬剤や殺虫剤もこの大きさに近い)で水を濾過するので、多くの物質を排除できる。

 だが、ROにせよ蒸留にせよ、そうして得た水にはある程度のミネラルを足す必要がある。また、アルカリイオン(電解)水生成器では、医薬化学物質は一切処理されないので、タイレノール風味のついたアルカリイオン水を飲むことになるかもしれない。

 はたして、大した問題ではないと切り捨てていいのだろうか?

 本当に大切なのは、そういう水の質にかかわるものは、細胞やホルモン、代謝にわずかどころか大きく影響するという点だ。

 水分補給については、一切の妥協を許してはいけない。

 安全で賢く水分補給を行うには、信頼できる湧き水や井戸水を選ぶか、RO浄水や蒸留水にミネラルが添加されたものを選ぶかが大きなカギを握る。