3月半ばから急速に円安が進み、1ドル=120円台後半に突入した。この裏には投機筋の円売りがある3月半ばから急速に円安が進み、1ドル=120円台後半に突入した。この裏には投機筋の円売りがある Photo:JIJI

2020年後半に100円台半ばだった円の対ドルレートは、現在120円台後半で推移している。日米金利差拡大や、日本の経常収支悪化など円安要因は当面続くため、円安はさらに進行しそうだ。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)

4月19日に1ドル=128円超え
投機筋の動きが大きく影響

 円安の勢いが止まらない。4月19日には1ドル=128円を超えた。ほぼ20年ぶりの円安水準だ。3月18日には119円台前半だったから、1カ月間で約9円円安が進んだことになる。

「円安は日本経済全体としてはメリットの方が大きい」としていた黒田東彦・日本銀行総裁も、19日の衆議院決算行政監視委員会で、メリットの方が大きいという認識は変えないとしながらも「急速な円安はマイナス」と軌道修正した。

 円安の背景には、日米金利差拡大と日本の経常収支の悪化がある。

 次ページ図上のグラフに見るように、米国の長期金利の指標である10年国債利回りは年明け以降1.6%台から2.8%台に急上昇した。

 その理由は、3月のCPI(消費者物価指数)上昇率が8%を超えるなどインフレが高進していることと、FRB(米連邦準備制度理事会)が、年内2%前後の利上げやQT(量的引き締め、量的緩和のために買い入れていた国債などの債券の保有高を減少させること)開始など急激に金融を引き締める姿勢を見せていることにある。

 一方、日本もガソリン価格の上昇や食品の値上げなどがあるものの、2月のCPI上昇率は0.6%と低水準。長期金利の指標である10年国債利回りは0.2%台半ばまで上昇したものの、3月下旬に日本銀行が0.25%で国債を無制限に買い入れるオペを実施するなど、上昇を抑制する姿勢を続けている。日米金利差は開く一方である。お金は、金利が低い通貨から高い通貨に流れやすい。

 日本の1月の経常収支は1兆1964億円の赤字と2カ月連続の赤字となった。2月は1兆6483億円と黒字を回復したものの、前年同月に比べて42%減少している。原油価格高騰が貿易収支の赤字を拡大し、経常収支の黒字を食いつぶしている。経常収支悪化は、通常の経済活動で日本へ入ってくるお金の減少を意味する。赤字なら流出だ。当然、円安要因となる。

 ただ、ここ最近の急激な円安の進行は、投機筋の動きが大きく影響している。投機筋は、円安要因の増大を読み、急速なドル買い円売りを仕掛けている。