竹田孝洋
日本銀行が2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げ、長期金利の指標である10年国債利回りも2%台に乗せた。変動は短期金利、固定は長期金利に連動するだけに、住宅ローン利用者の不安は大きい。中立金利、期待インフレ率、自然利子率、そしてタームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)を手掛かりに、利上げの終着点と10年国債利回りの上限を検証する。

2025年の世界経済はトランプ関税に振り回され、先行きが危ぶまれた。しかし、終わってみればAI投資の急増で経済は拡大し、主要国の株価も最高値を更新した。だが、26年以降もこの好調が続くとは限らない。歴史的なショックは、好調な経済、相場の後に訪れることが少なくない。中空麻奈BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長、武田洋子三菱総合研究所常務研究理事、大槻奈那ピクテ・ジャパンシニア・フェローの3人に、26年以降の世界経済のリスク要因を総点検してもらった。

高市政権の経済政策である「サナエノミクス」は、アベノミクスをどう改良し、経済成長と財政の持続可能性を両立させようとしているのか。経済財政諮問会議の民間議員で、前日本銀行副総裁の若田部昌澄氏に、アベノミクスの反省点や、高市政権の責任ある積極財政と成長戦略の要諦を聞いた。

トランプ政権下でFRBの独立性はどう揺らぎ、利下げ圧力と次期議長人事は市場に何をもたらすのか。AI投資バブルとプライベートクレジットへの懸念、膨張する財政赤字とインフレ懸念が重なる米国経済の行方をジョセフ・クラフトロールシャッハ・アドバイザリー代表取締役と小野亮みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部プリンシパルが読み解く。

2026年の米国経済にトランプ関税はどう影響するのか。AIバブルの調整や雇用悪化で景気後退に向かうのか。ジョセフ・クラフトロールシャッハ・アドバイザリー代表取締役と小野亮みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部プリンシパルが、賃金・雇用、トランプ減税とOBBBA、インフレとFRBの政策対応、連邦最高裁判所のIEEPA(国際緊急経済権限法)判決や対米投資の行方まで多角的に読み解く。

高市政権の「サナエノミクス」は、物価高対策と危機管理投資で成長力を高めつつ、日本銀行への圧力を通じて利上げを抑え込み、インフレと円安を長期化させかねない。一方、トランプ政権の減税とAI投資拡大は米国株を支える。円安は長期化し、日経平均株価6万円乗せが視野に入る。マーケット対談後編では佐々木融氏と西原里江氏に、高市政権やトランプ政権の経済政策の市場への影響と中長期の為替相場、株価の行方を検証してもらった。

人手不足を背景にした賃上げで日本のインフレは高止まりし、高市政権の下、日本銀行は思うように利上げができない。一方で、減税と投資流入を追い風に米国経済は底堅く、トランプ関税が物価を押し上げる。財政拡張で日本経済も成長が続く。2026年の株価・為替の見通しを、佐々木融・ふくおかフィナンシャルグループチーフ・ストラテジストと西原里江・J.P.モルガン証券チーフ株式ストラテジストが徹底検証する。

2026年の日本経済の成長率は「0%台後半」と25年を下回りそうだ。ただし、物価上昇率が鈍化し、26年前半には実質賃金はプラス転じ、家計消費を下支えする。投資と併せ、内需が堅調を維持する。10人の専門家に、日本経済の行方を聞いた。

高市早苗氏の自民党総裁就任と新政権発足を受け、株高とともに円安が進行した。日銀の利上げ見送りとFRBの慎重な利下げ姿勢が重なり、ドル円相場は一時154円台をつけた。日米金融政策の行方の組み合わせ別に相場の先行きを予測する。

公明党の連立離脱から首相指名直前まで「高市トレード」で株は急騰、最高値を更新した。その後一転伸び悩み、格言通り“噂で買い、事実で売る”展開となったものの、週明けの27日に日経平均株価は続伸し、初めて「5万円」の大台を突破した。日本株はどこまで上昇し、株高はいつまで続くのか。今後はサナエノミクスの実行度と第2四半期決算の増額修正の有無が焦点だ。

#6
AI議事録で脚光を浴び上場したオルツの不正会計は、東京地検特捜部が10月9日、元社長ら4人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕する刑事事件に発展した。同社は、売上債権や在庫の膨張では見抜きにくい“資金の循環取引”で決算を偽装。偽装の兆候はどこに表れていたのか。長期連載『スタートアップ最前線』で、オルツ不正会計の真相に迫る。

#5
AI議事録作成サービスで注目を集め、鳴り物入りで東証グロース市場に上場したオルツ。しかし、上場から1年足らずで不正会計が発覚し、株価は100分の1以下に暴落、上場廃止に追い込まれた。急成長の裏に隠されていたのは、製品を介さない巧妙な「資金の循環取引」。監査法人や主幹事証券、取引所の審査をもすり抜けた驚きの手口とは。第三者委員会の報告書を基に、スタートアップの闇を解き明かす。

#4
日本は米国との関税交渉で合意に達したものの、“合意通り”の関税率が反映されない状態が続いている。合意通りに関税が引き下げられたとしても日本経済へのダメージは避けられない。識者9人に日本経済の行方を検証してもらった。

#3
欧州連合(EU)はトランプ政権との関税交渉で相互関税率15%で合意した。とはいえ、従前より関税率が上がったことで輸出への影響や成長率低下は避けられない。加えて、合意に当たっては米国産エネルギー輸入や追加投資を約束したが、その目標達成の困難さから、関税引き上げリスクも残る。欧州経済の識者5人に、トランプ関税のユーロ圏経済への影響を検証してもらった。

#2
2025年1月に2%台だった米国の平均実行関税率は、相互関税の上乗せ分発動で8月には18%台へ急騰した。輸入物価上昇は消費と企業業績を直撃しかねないが、株式市場は史上最高値を更新し楽観ムードが広がる。ただ、関税の影響はこれから本格化する。米国経済の識者5人に景気、物価、金融政策の行方を予測してもらった。

#1
8月11日、トランプ米大統領は中国への一部追加関税の90日間の再度停止を決定した。とはいえ、中国からの輸入品に対する米国の関税率30%は維持される。5人の識者にトランプ関税の影響を受けた今後の中国経済の先行きを分析してもらった。

米FOMC(連邦公開市場委員会)は、7月の会合で政策金利を据え置いたものの、ボウマン副議長とウォラー理事が利下げを主張して反対票を投じた。もともとタカ派だった彼らの“変節”は、雇用悪化とトランプ関税による物価上昇が一時的との認識を背景にしている。FOMCの分断は解消しそうにないが、8月1日に発表された雇用統計の大幅下方修正もあり、9月の利下げ再開の可能性が高まっている。

参議院選挙で自民・公明の連立与党が過半数割れとなったが、株式市場の反応は限定的だった。その後に伝えられたトランプ関税を巡る日米交渉の妥結が市場に好感され、日経平均株価は急上昇。一時4万2000円を突破する場面もあった。だが、業績よりもPER(株価収益率)の上昇が寄与している背景もあり、株価の持続性には疑問も残る。今後の相場を為替の見通しと併せて検証する。

自由民主党と国民民主党が掲げる名目GDP(国内総生産)1000兆円という経済目標。その達成には年平均で3.5~4.5%の成長が必要となるが、現在の潜在成長率や物価上昇率の動向から見て、実現は可能なのか。安倍内閣時代の600兆円目標が達成された背景や、近年の実質経済成長率の停滞も踏まえつつ、目標達成の可能性を検証する。

消費税減税や給付金、社会保険料引き下げなどの公約が各党から打ち出されている。だが、それらがもたらす財政負担の裏付けの根拠が危ういものも少なくない。巨額の国債残高を抱える日本が今後も“財政破綻しない国”でいられるのか――その前提と変化の兆しを検証する。
