――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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1-兆-ドル!
政治家の中には、自社株買いが米企業から資本と賃金労働者を吸い取り、邪悪な企業の成り金たちをますます金持ちにしていると指摘する声もある。
そうした批判はほとんど見当違いだ。というのも、実際のところ企業は長年、現在とそう変わらない割合で株主に利益を還元してきたからだ。自社株買いは、より目新しくて単発的な還元方法であるにすぎない。一方、安定配当は退職者に欠かせない収入源だが、財務的には自社株買いに非常に近いにもかかわらず、決して手厳しい批判を浴びることはない。不平等への対応策としてはるかに良い方法は、法人税もしくは最低賃金の引き上げである。
ゴールドマン・サックスによると、S&P500種採用企業の自社株買いは今年、1兆ドルを上回る勢いで伸びている。選挙の年とあって、こうした事実を背景に論調が一段と激しくなる可能性もある。だが投資家には、政治介入の可能性より大きな問題が待ち受けている。自社株買いの活発化は、市場が天井に近いことを示唆するからだ。