「斬新な絵」で知られるパブロ・ピカソの遺産総額は、作品の価値を含めると4000億円~8000億円に上るとされている。このことから、彼は「人類史上もっとも経済的に成功した芸術家」と呼ばれるようになった。だが意外にも、生前のピカソは美術愛好家よりも、美術作品を転売して儲けようという投資家に好かれていた。その詳細を、堀江宏樹氏の著書『偉人の年収』(イースト・プレス)から、一部抜粋・再編集して解説する。
斬新すぎる絵画で
8000億の富を築いたピカソ
20世紀前半の美術界におけるスーパースターは、間違いなくパブロ・ピカソでしょう。彼は一人の美術作家にもかかわらず、実業家顔負けの資産を誇っていました。
1973年に91歳で亡くなった彼の遺産総額は推定で11億5000万~12億5000万フランほど。『日本長期統計総覧』第3巻によると1973年の1フラン=約59・60円なので、685億~745億円に相当します。 その額だけでも凄いのですが、彼の遺産には4万点以上の自作が含まれ、その価値は上がる一方でした。
美術市場には「有名作家が死ぬと、その作品の評価額は上昇する」というルールがあります。それゆえ、ピカソの遺産の真の評価額たるや4000億円、いや、8000億円はあると指摘する研究者もいます。
この記録によって、ピカソは「人類史上もっとも経済的に成功した芸術家」と呼ばれるようになりました。1910年頃に人気作家の仲間入りをして、亡くなるまでの63年間で8000億円を稼いだと考えれば、単純計算で平均年収約127億円!
実際は紆余曲折あったにせよ、ピカソがこれほどまでに莫大な財産を築けた理由としては、20世紀初頭の芸術市場の動向と彼の作風がマッチしていた点があげられます。