アートの裏側「美術とお金」全解剖#6Photo:AFP=時事

誰でも、最初は先達の作品(美術品)を模倣することから始める。美術品のコピーを制作するだけなら犯罪にはならないが、「贋作」を販売すれば、立派な詐欺行為となる。とはいえ、おカネが動機とは限らない、贋作者たちの屈折した内面に秘められた心理に迫った。特集『アートの裏側「美術とお金」全解剖』(全10回)では、世界の美術界で今日でも「20世紀最大の贋作事件」といわれる大騒動を巻き起こした、伝説の贋作者による「フェルメール事件」をはじめとして、古今東西の有名な贋作騒動12選をお届けする。

「週刊ダイヤモンド」2017年4月1日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

贋作のミステリアスな世界
美術界における知られざる裏面史

 頭に青いターバンを巻いた少女がこちらを見詰める「真珠の耳飾りの少女」などの作品で知られるヨハネス・フェルメール(1632~75年)は、17世紀のオランダを代表する画家である。緻密な空間の構成と光を取り入れた巧みな質感の表現は、現代の日本でも人気が高い。

 世界の美術界で、今日でも“20世紀最大の贋作事件”といわれる大騒動が、第2次世界大戦が終結した1945年に発覚した「フェルメール」事件である。