原燃料価格の高騰やコロナ禍の影響を受け、業績の足踏みが続く帝人。ただ、成長領域に据える自動車向け事業などでは光明が見えつつあるという。4月に就任した内川哲茂新社長がその成果を語る。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

赤字が続く自動車向け材料新会社
自動車市場の動向をどうみる?

――中期経営計画では自動車向け複合成形材料事業を成長領域に掲げました。中核のテイジン・オートモーティブ・テクノロジーズ(2017年に買収した米コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックスなどを統合した新会社)はのれん償却後で赤字が続き、収益改善が長年の課題です。

内川哲茂・帝人代表取締役社長執行役員うちかわ・あきもと/1966年1月生まれ。滋賀県出身。90年信州大学修士課程修了、帝人入社。高機能繊維事業本部商品開発部長などを経て、17年帝人グループ執行役員、21年取締役常務執行役員、22年4月より現職。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 生産性の向上については以前から取り組んできました。特に採算改善に貢献する「生産プロセスの自動化」については、昨年末に体制がようやく整いました。今年はいよいよ数字の面で花を開かせる年になると考えています。「デジタルツイン(現実世界に実在するものをデジタル空間で再現する技術)」を使って工場のレイアウトや動線の改善も進めており、効率化の余地はまだまだある。

 またこれまでの実績から、今後攻めるべき車種や地域がはっきりしてきました。SUV(スポーツタイプ多目的車)のルーフシステムでは、軽量化だけではなく漏れを防ぐシール構造などの提案力が評価されています。ピックアップトラックの荷台などでもデザインから試作、量産まで一気通貫した体制が評価され採用されています。この辺りの領域なら十分戦えると分かってきました。

 新型コロナウイルスの感染拡大や、物流危機、半導体不足、労働力不足などの問題が一気に浮上し、外部環境は険しさを増しています。そんな中でも、しっかりと実行できたことについては、ファクトベースで評価することが重要だと考えています。

――ファクトベースで評価するとはどういう意味でしょうか?

 自分への戒めでもありますが、新しい立場にアサインされると、焦って特別なことをしたがる人が多い。ただ、そうした思い付きではなく、できたこと、できなかったことを事実に基づいて検証した上で、新しい戦略を構築したい。

 株価などは確かに思わしくはありませんが、そうした数値のフィルターを通して見てしまうと判断を誤ります。

 過去に立てた目標の前提が変わっていないのであれば、実現できたことにはしっかり丸を付けて評価をしようということです。

――ただし、自動車各社で減産が続いており、生産の正常化の見通しは立ちません。自動車市場の動向をどのようにみていますか。