「換言すれば、この決定は、大部分において民主的なプロセスの結果だった。突き詰めていくと、リーマンを救済したくなかったのは、米国市民なのだ」。

 しかしながら、「なぜ民主的な政策決定過程は誤った決定を導くのか?」。人間行動学のいくつかの実験は、経済的な選択に直面した経済主体にとって、個人の利益だけが判断の動機になるのではなく、公平性や相対的な状況も動機になることを示している。

 米国のここ10年の1人当たり所得の伸びは、1930年代の大恐慌時を除けば、過去100年で最悪だった。しかし、対照的に米国の金融セクターは近年繁栄を謳歌した。

 全産業の利益における金融部門のシェアは過去5年において40%に達した。これは96~2000年の平均の2倍である。これらが米世論や政策当事者のリーマン救済議論に影響したとスマギ理事は指摘している。

 現実問題として、民主的な政策決定を否定するわけにはいかない。危機の再来を防ぐには、結局は、昔から存在する手段である規制・監督を金融セクターに用いることが必要と同理事は結論づけている。

 米国を中心とする金融業界には、華やかな「宴」の後に、窮屈な時代が待ち受けていることになる。

(東短リサーチ取締役 加藤 出)