ドイツのアンゲラ・メルケル前首相ほど、その外交政策のレガシーに対する評価が急速かつ徹底的に落ちた例は極めて少ない。メルケル氏は、ドイツ政府を率いた16年間、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の帝国主義的野心を抑えることができると考え、その過程で、プーチン氏のエネルギーをめぐる脅迫に対してドイツと欧州全体を脆弱(ぜいじゃく)にした。しかし、メルケル氏に後悔の念はあまりない。それは、昨年の辞任以来初めて公の場に姿を現す主要な機会となった際の発言から明らかだ。メルケル氏は7日、首都ベルリンにあるベルリーナー・アンサンブル劇場で、「私は自分を責めていない。私は悪事を防ぐ方向で取り組もうとしていた。また、外交が成功しないからと言って、それが間違っていたということにはならない。したがって、『あれは間違っていた』と言うべき理由が分からない。よって、私は謝罪しない」と聴衆に述べた。