市場のボラティリティー(変動率)が高まる中、米国市場で株式と債券を売っている外国人投資家がドルを抱え込んでいる。外国人投資家は通常、本国に送金する際に現地通貨に交換するが、今回はそれを控えている。米国の資本動向統計を見ると、外国勢のドル保有高が過去最高に迫っていることが分かる。投資家がリスク資産を減らし、国際準備通貨であるドルを抱え込んでいるからだ。ドイツ銀行の為替ストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏は顧客向けリポートで、「リターンを得られる数少ない金融資産の一つであるドルは、世界的なスタグフレーション(インフレを伴う景気減速)ヘッジの役割を担っている」と述べた。こうした潮流は、数十年ぶりの高水準に達したインフレと中央銀行の対応が、株式・債券・暗号資産(仮想通貨)・コモディティー(国際商品)といった多様な市場をいかに揺るがしているかを改めて浮き彫りにするものだ。S&P500種指数が先週、直近高値からの下落率が20%に達して弱気相場入りする中、ドルは世界の安全通貨として浮上しつつある。言い換えると、米連邦準備制度理事会(FRB)などの中銀がインフレ抑制のために金融緩和策を縮小する中、これまで落ち着きを保っていた為替市場にも動揺が広がっているということだ。