「世の中をあっと言わせる企画を作りたい」「自分の夢を仕事で実現させたい」「ユーザーの気持ちがわからない」「企画書が通らない」「プロジェクトを成功させる方法が知りたい」など商品開発や新規事業を生み出す上でのあらゆる悩みを解決!
本連載の著者は「千に三つ」や「一生涯一ヒット」と言われる食品(飲料)業界において「氷結」「スプリングバレーブルワリー」「淡麗」「キリンフリー」など数々のヒット商品を生み出してきた和田徹氏。実は入社から12年間、ヒット商品ゼロだったという著者。なぜ、失敗だらけだった人が、ヒット商品を量産できるようになったのか? 売れ続ける商品づくりの全技法を明かしたのが『商品はつくるな 市場をつくれ』(3月15日刊行)という書籍です。刊行を記念し、本書の一部を特別に公開します。
衝動を感じたときがチャンス
仕事も勉強も、最初のアクションである「まず、手をつける」というのが最大の難関です。過去に何度も苦労してきて、頭でわかっているのに、難しい。しかし、これをクリアしなければ先には進めません。私の場合、企画書を書くスイッチが入るのは、だいたい次に挙げる5パターンのいずれかです。
まずは、自分の中にある内部エネルギーの高まりを感じたとき。
食事をすると排泄しなくてはいけないように、人間の思考も、インプットを続けていると、必ず、アウトプットをしたくなるようにできていると思うのです。
インプットで内部エネルギーの圧力を高めておけば、なんらかのきっかけで「企画書を書きたい衝動」の爆発が起こるはずです。企画書を書かずにいられなくなり、いろいろなアイディアが次から次へと波のように押し寄せます。メモをとらなければ片っ端から流れ去ってしまうので、とにかくキーワードだけでも残しましょう。
特にそのきっかけは、気持ちが動かされるようなもの、愛や情動が強いです。
「キリンフリー」の開発のきっかけとなったのは前述の通り痛ましい飲酒運転死亡事故だったのですが、さらに企画を書き始めるのを後押ししたものがありました。
それが「0(ゼロ)からの風」(2007年公開、監督・塩屋俊)という映画です。この作品は、飲酒運転の交通事故でひとり息子を亡くした母親が、絶望と苦しみの中で危険運転致死傷罪の成立を成し遂げるまでの姿を描いたものです。その母親には実在するモデルもいます。
飲酒運転で失われた命。遺族の悲しみと終わらない苦しみ。そして、加害者にも苦しみがありました。それらを目の当たりにして、ある日、衝動的に企画書を書き始めたのです。
何も、悲しいことや不満だけがきっかけになるわけではありません。うれしい、幸せと感じたとき。人生で大切なものを見つけたとき。社会のために懸命に尽くしている人、信念を貫き通している姿に触れたときに心は動きます。何にせよ、大きく気持ちが揺さぶられた瞬間がチャンスです。
締め切りセットに上司を使う
これは誰もが使える方法です。夏休み最終日を待たずに、自分で締め切りをつくり、宿題に取りかからないといけない状況にして、自分で自分を追い込む方法です。
企画の相談に乗ってほしい人と顔を合わせたら、こんな約束を取り付けてしまいます。
「今度、ちょっと話を聞いてもらえませんか? お忙しいと思いますので、再来週くらいで、お時間をいただけませんか?」
まだ人に見せるほどのものじゃないけれどボンヤリと「そのうち企画にまとめたいな……」と思っているものは、自分から動かないと、そのまま消えてしまう可能性もあります。アウトプットするためには、否が応でも「アウトプットしなくてはいけない状況」をまずつくってしまうのです。
上司やちょっと偉い人との約束なら「ごめんなさい、やっぱりなしで!」とは言えません。先送りもしにくく、すぐに取りかからなくてはいけなくなります。