「まず10分!」で取りかかろう

 書かなくてはいけないときに限って、何も頭に浮かばない。気が乗らない。書ける気がしない。そんなときは、「まず10分!」と自分に号令をかけてみましょう。

「ちょっとネットで調べものをしてからにしよう」
「あの資料を探して、取りかかろう」

 そんな準備は後回し。寄り道や逃げ道はこの時点では断ちましょう。とにかく10分間だけでいいので、企画書に取りかかってみるのです。

 直前までまったく書ける気がしなかったのに、気がつけば完全にスイッチオン。あっという間に1、2時間経ってしまうようなこともあり得ます。「やる気を出そう」なんて可愛らしいことを考えずに、他のことは強制停止。「まず10分!」で取りかかってしまいましょう。

精度、完璧さは求めない

 良いことを書こう、かっこよく書こうと思った途端に書けなくなってしまいます。

 完成度を上げるのは、ずっとずっと後のこと。最初から良いものを求めずに、まずは書き出してみましょう。

 商品づくりは「言葉開発」でもあります。究極の言葉を探して、試行錯誤を続ける旅です。最初の一球で、どストライクの言葉に行き当たることは、ほとんどあり得ません。言葉が決まらないなら、仮置きでもいいので、何か置いて、おおまかな形からつくっていきましょう。

「何か違う」「どこか違う」ちょっと惜しい言葉ばかりが出てきても、そこは我慢。それらを突き詰めていくうちに、いつか必ず探していた言葉につながります。

 まずは書き出してみることです。

環境の助けを借りて、クリエイティブ・モードに入り込む

 企画書と向き合う時間を増やすには、書く環境にも配慮します。

 机の上には余計なものを置かず、きれいに片づける。スマホは裏返す(あるいは通知オフに)。パソコンのデスクトップに余計なものを表示しない。メールやメッセージソフトを閉じる。在宅勤務なら、気になるものや「まずい、◯◯をしなくては」と不安になるものが目に飛び込んでこない場所を選ぶのも重要です。

 なんらかの要因で意識が離れると、気持ちが元の場所に戻ってくるのに10分かかります。何度もそれを繰り返していると、それだけで時間が過ぎていきます。

 また「アイディアは、クリエイティブな空間で生まれる」というのも本当で、オシャレなインテリア、アートな空間を取り入れている会社が世界中にたくさん存在します。会社にとって、社員のクリエイティビティを刺激するのは必然。それが会社の成長につながると確信しているからです。

 だからといって、簡単に仕事場は変えられません。そういうオフィスでない場合は、少しでも自分のクリエイティビティを刺激できそうなスポットを探しましょう。オシャレな休憩スペース、眺めの良い場所、公園、コワーキングスペース、カフェなど。

 そして、筆記用具やデジタルツールは、ちょっと奮発し、デザインや書き心地重視で選んでみる。些細なことですが、けっこう効果はあります。「自分はクリエイティブな人間なんだ」と暗示をかけてみましょう。

(本原稿は、和田徹著『商品はつくるな 市場をつくれ』を編集・抜粋したものです)