山形新幹線が7月1日で開業30年となった。「逆転の発想」によって早期開業を実現した歴史と、これからのさらなる進化の計画とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
山形新幹線は
法律上は新幹線ではない
7月1日で山形新幹線が開業して30年となった。国鉄時代から存在した新幹線は東海道、山陽、東北、上越の4路線。山形新幹線は分割民営化後、最初に開業した「新幹線」である。だが、これはご存じのように福島から山形、新庄まで在来線の奥羽本線を走る、いわゆる「ミニ新幹線(新幹線在来線直通運転)」だ。
全国新幹線鉄道整備法はその第2条に「『新幹線鉄道』とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」としており、最高速度・時速130キロで走行する福島~山形・新庄間は、本来の新幹線の定義に当てはまらない。
JR東日本は東京~福島・新庄間を結ぶ「つばさ」号を「山形新幹線」と呼んでいる。そのうち東京~福島間は東北新幹線を走るのだから、残る福島~山形・新庄間が山形新幹線を構成する主要素ということになるが、この区間は法律上、新幹線ではないのである。ただ、法律の定義がどうであれ営業戦略上、新幹線と名乗ることに問題はない。東北新幹線奥羽本線直通列車より分かりやすく、親しみがわくのは間違いないだろう。
JR東日本は山形新幹線の2年前に、上越新幹線越後湯沢駅近くの保線基地につながる線路を転用して、同社が運営するガーラ湯沢スキー場直結のガーラ湯沢駅を開業している。これも在来線である上越線の支線に乗り入れている扱いとなっているが、一般には分かりやすく上越新幹線が延長運転を行うという体をとっている。
では、そうまでして乗り入れなければならないほど山形県の交通が不便だったのかというと、そういうわけではなく、山形新幹線開業前も奥羽本線には特急列車が頻繁に走っていた。山形新幹線がその名を引き継いだ在来線特急「つばさ」は新幹線開業前、福島~山形間を1日当たり12往復、概ね1時間25分程度で結んでおり、現在の16往復、1時間10分程度と比較しても遜色ない。