環境文化創造研究所内ヤマビル研究会の谷重和さんによると、ヤマビルは吸血のために肌にかみつくと同時に痛みを感じさせないモルヒネのような物質を出すという。

「そのため、吸血後、衣類や靴下などが赤く染まっていることに気づいて、ヤマビルに吸い付かれたのを知ることが多いんです。ヤマビルは吸った血が凝固しないように、ヒルジンという物質を分泌するので、血が止まりにくい。それだけに驚かれると思いますが、人命にかかわることはありません」(谷さん)

 吸血中のヤマビルを見つけた場合は、どうすればいいのか?

「虫よけ剤をスプレーすれば簡単にとれます。無理にはがすと傷口が大きくなるといわれることもありますが、それは誤解です。吸血されていたら、すぐにヤマビルをはがしてください」(谷さん)

 傷口は流水でよく洗うことが大切だという。

「傷口から血を押し出すようにして洗ってください。ヒルジンなどヤマビルの体液を押し出すことでかゆみや腫れを軽減できます。最後に抗ヒスタミン剤(虫刺され薬やかゆみどめ)を塗布すればよいでしょう。出血が続く場合は傷口にばんそうこうを貼っておくといいです」(谷さん)

 ヤマビルは北海道と青森県を除くほぼ全国の低山や山里に生息している。湿り気を好むため、雨が降っているときや雨上がりに活発に活動する。

「キャンプ場では、水道周辺の湿った場所や日陰にヤマビルが多く生息しています。裸足になるときは十分に注意してください」(谷さん)

熱中症対策も万全に

 ヤマビルは人間の呼吸に含まれる二酸化炭素と体温に反応して、取りつき、よじ登ってくる。

「ほんの少しの隙間からでも侵入してくるので、靴下を必ずはくようにしてください。できれば、靴下の中にズボンの裾を入れ、長靴や靴を履くと安心です。暑い日は大変だと思いますが、おすすめです。同時に熱中症対策もお願いします」(谷さん)

 さらに谷さんはヤマビル対策として、虫よけスプレーを勧める。

「靴下や靴に虫よけ剤やヤマビル専用の忌避剤をスプレーすると対策の効果が増します。雨が降らなければ3、4時間は効果が持続します」(谷さん)

 マダニもヤマビルも、吸い付かれると精神的なショックが大きい。マダニは感染症の心配もある。キャンプを楽しい思い出とするために、準備を怠らないようにしてほしい。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

AERA dot.より転載