100億円を投資し、インバウンドも呼び込む
ネスタリゾート神戸は、コロナの嵐で日本中のレジャー施設が閉鎖に追い込まれ苦しむ中、実に大健闘を見せた。年間集客は刀の支援前の3倍以上となり、最もコロナが厳しかった2020年度には、なんと創業以来初となる黒字化(償却前営業利益)に成功したのだ。直近の2022年第1四半期(1~3月)でも、過去最高の売上を更新し、その勢いは止まらない。
結果を出したことで刀は信頼を得ることができたようだ。オーナーから経営権の譲渡を打診された。成功確率を上げるために刀が新たな経営パートナーとして迎えたのは、1982年に大阪で創業した総合不動産デベロッパー、サムティである。
サムティの小川靖展社長は刀の申し出に最初は驚いたという。
小川社長 「テーマパークを手がけるということは、とてつもなくハードルの高いことなのです。日本中を見回したって、成功しているのはTDRやUSJなど数えるほどしかない。そこへ我々のようなマンションやホテルが主軸の会社が挑んで歯が立つのか」
だがネスタリゾート神戸にはホテルもある。ここならサムティの得意分野だ。力を発揮できる。そして何より集客施設の経営において絶大な実績のある刀と組めば、「モノからコトへ」の時代を先取りした事業ができる。地方創生のモデルケースとなるかもしれない。
かくしてサムティと刀、6対4の出資比率で2022年7月1日に新会社が設立された。
森岡 「今後5年間で100億円の投資をし、ネスタリゾート神戸をアウトドアレジャーの聖地にしていきます。甲子園球場60個分の敷地の半分はまだ残っていますし、新しいアイデアも数十個あります。例えば、山の中にもっとコースを造ってバギーで爆走させたら面白い。ホテルもサムティさんと組んで、大自然の冒険テーマパークにふさわしい体験ができるようなものにしていきます。日本だけでなく、世界中のお客様に来ていただけるようなリゾートにしていきます。消費者にとってさまざまな彩りある選択肢があるということは、社会の豊かさであると私は思います。TDRやUSJのような巨大なテーマパークだけがパークではない。さまざまな地域にもさまざまなコンセプトで戦い方があるはずです。デジタル化が進む世の中だからこそ、我々は生の体験をどこよりも強烈に深くお届けしたい」
地方創生のモデルケースとなるべく、刀とサムティは手を取り合って歩み始めた。それは課題山積のこれからの日本社会にとって、希望の光となるかもしれない。