「大自然の冒険テーマパーク」として注目を集めるネスタリゾート神戸の経営権が、森岡毅率いる株式会社 刀と関西の総合不動産デベロッパーであるサムティ株式会社が設立した新会社に譲渡された。このことは何を意味するのか?『苦しかったときの話をしようか』の著者としても知られる森岡氏に真相を直撃した。(取材・ダイヤモンド社/亀井史夫)
一度破綻したリゾートをV字回復
ネスタリゾート神戸は、元を辿ればグリーンピア三木と呼ばれた施設である。1980年代に年金福祉事業団が全国13ヵ所に設置したグリーンピアは、どこも赤字続き。不適切な年金の使い方であると批判され、2005年までにすべての施設が売却された。
その後、兵庫県から延田エンタープライズへ経営権が譲渡された。同社は大規模な投資をして2016年にネスタリゾート神戸として再オープンし、経営再建を図ったが、思うように業績は回復しなかった。そこで2018年から森岡毅率いるマーケティング集団・株式会社 刀の支援を受けた。
森岡毅(以下、森岡) 「これはかなり難易度の高い案件であるなと思いました。ネスタリゾート神戸には、立派なホテルやプール、テニスコートなどの施設はある。しかしリゾートとしての顔(ブランド)がなかった。そもそも何のための施設かわからないから、消費者の選択肢にも入ってこなかったのです」
ホテルやプールがあるリゾートなら、日本中のどこにでもある。関西ならまだ訪れる理由はあるかもしれないが、関西以外の人にとっては存在すら知られていないリゾートだったのだ。
森岡 「敷地は広大ですが、ほぼ何もないと言っても良かった。あるのは自然だけです。でも、何もないことは逆に武器になると思いました。アウトドアの冒険テーマパークとしてなら再生させられると考えたのです」
あるのは広大な敷地と自然だけ。もちろん資金も限られている。そこで刀が最初に打ち出した案は、悪路をバギーで走り回るアトラクションだった。ワイルドな山道をバギーで走り回るのは非日常の楽しさがある。加えて、バギーを購入するだけなら出費も抑えられる。
2018年~2019年、この「ワイルド・バギー」のほか、動物たちと触れ合える「アニマル・フレンド」、池をカヌーで巡る「ワイルド・カヌー」などを加え、「大自然の冒険テーマパーク」というコンセプトで立て直しを図ると、見事に集客は甦った。
しかし、そこに襲ったのがコロナである。
森岡 「今思えば、2020年の夏に新エリアをオープンするかどうかが大きな分岐点でした。あそこで閉鎖を選択してしまえば、それまでの宣伝費などが全て無駄になってしまう。我々はコロナがどう広がるか、数学的なシミュレーションをし、夏にオープンすべきだと思いました。しかしオープンしたことでもしコロナの感染が広がれば、大きな批判を受けます。そんな状況の中、前オーナーは覚悟を持って、オープンすることを決断されたのです」
オープンした新エリア「アドベンチャー・キャニオン」には、ジップラインで空を駆ける「スカイ・イーグル」、透明な球体の中に入って丘を転がり落ちる「キャニオン・ドロップ」など、ネスタリゾート神戸ならではのワクワクするアトラクションが加えられた。刀による緻密なマーケティングによって、コロナの隙間を縫うように数々の施策を成功させていった。