幾多の批判を乗り越えて
継続する配偶者控除
安倍新政権の鳴り物入りの政策の一つは、女性パワーの活用だ。閣僚と自民党四役にそれぞれ2人ずつ女性を登用し、早速アピールしている。
昨年秋のIMF東京総会で、ラガルドIMF専務理事は「日本では、質の高い女性労働力が活用されていない。女性は日本の潜在力で、働く女性を増やせば、日本経済がよくなる」という力強いメッセージを送った。
企業経営面でも、女性管理職をうまく活用している会社ほど、パフォーマンスがいいという実証研究の成果もある。
このように、女性パワーの活用が今後のわが国の政策に占める重要性は高まりつつあるが、ひとつ抜け落ちている政策がある。それは、専業主婦や一定所得以下のパート主婦を(もつ夫を)優遇する配偶者控除の問題である。
年間所得38万円(給与収入でみると103万円)以下の配偶者(多くの場合妻)がいる納税者(多くの場合夫)は、年間38万円の所得控除(課税所得が少なくなる措置)が受けられる。
パートで働く配偶者の所得が多くなると、夫の配偶者控除がなくなり税負担が増える逆転現象(いわゆるパート問題)への対応から、配偶者特別控除が創設され、「税制上の」手取りの逆転現象は解消さたが、妻が専業主婦であるというだけで一定の減税を受けられる制度は、これまで幾度も問題になり議論されてきた。
古くは小泉内閣時代の02年の「男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会報告書」で、配偶者控除は「生き方や働き方の選択に中立的でない」として、その見直しが強く示されていた。民主党政権でも、「配偶者控除の廃止」をマニフェストに掲げており、実際、政権交代直後には税制調査会でも議論が行われた。
しかし、今日までこの税制は、幾多の批判を跳ね返して続いてきた。