陳列された冷凍食品Photo:123RF

実は、冷凍食品や食洗機には、共通する「人の心をくすぐる仕掛け」がある。これは、合理的なデータだけでは説明ができないものだ。その内容を、行動経済学の視点から解説しよう。(マーケター 松本健太郎)

人の心は、必ず矛盾するもの

 人間は論理的な「金銭勘定」と、情緒的な「琴線感情」を併せ持ちます。メタボで痩せなきゃいけないけど、ダイエットは明日から、スイーツは別腹。親孝行はしなきゃいけないけど、介護で一生を終えたくない。言っていることは矛盾しているし、行動は極めて非合理的です。

 なぜ、人間は矛盾するのでしょうか? 残念ながら「人間は合理的に意思決定を行う」とする伝統的な経済学では、この相反する矛盾を説明できませんでした。

 そこで、非合理的な行動に走る人間を学問の対象とした「行動経済学」が生まれました。あらゆる人間が合理的に非合理な意思決定を下す理由として、記憶、思考、与えられた情報量などが原因でゆがんでいる(バイアスを持っている)ことを突き止めたのです。

 次のページでは、そんな行動経済学の観点から、冷凍食品が「味」、食洗機が「除菌」をうたうワケと、そこに隠れたビジネスチャンスになりうるバイアスを解説しましょう。