家電量販店が「希望小売価格」を値札に表示する納得の事情Photo:Diamond

家電量販店で、よく目にする「希望小売価格」。実は、ここには家電量販店が顧客を操るための「ある戦略」が詰まっている。東京大学大学院で教壇に立つ阿部誠氏が、その理由を解説する。

いくらなら高いと感じる?

 まずは、消費者が価格についてどのように感じているのかを見ていきましょう。以下のような状況を考えてみてください。

 夏の暑い日、ビーチで寝転んでいたところ、友達がビールを買ってこようと提案しました。この近辺でビールを買えるところはおしゃれなリゾートホテルのバーしかなかった場合、いくらまでなら払いますか? 逆に、この近辺でビールを買えるところが古びた雑貨店しかなかったとしたら、いくらまでなら払いますか?

 おそらく多くの人は、ホテルのバーでしか買えないときに払ってもいいと思う金額の方が、雑貨店でしか買えないときに払ってもいいと思う金額よりも高い額を答えるでしょう。これは私たちがそれぞれの店舗で予想するビールの価格が異なるからです。

 次のページでは、私たち消費者が知らず知らずのうちに思い込んでしまう「思考のクセ」と、賢いマーケターが設定する「価格の戦略」について行動経済学の知識をもとにお話ししましょう。