家電量販店で、よく目にする「希望小売価格」。実は、ここには家電量販店が顧客を操るための「ある戦略」が詰まっている。東京大学大学院で教壇に立つ阿部誠氏が、その理由を解説する。
いくらなら高いと感じる?
まずは、消費者が価格についてどのように感じているのかを見ていきましょう。以下のような状況を考えてみてください。
おそらく多くの人は、ホテルのバーでしか買えないときに払ってもいいと思う金額の方が、雑貨店でしか買えないときに払ってもいいと思う金額よりも高い額を答えるでしょう。これは私たちがそれぞれの店舗で予想するビールの価格が異なるからです。
次のページでは、私たち消費者が知らず知らずのうちに思い込んでしまう「思考のクセ」と、賢いマーケターが設定する「価格の戦略」について行動経済学の知識をもとにお話ししましょう。