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超金融緩和の出口戦略で
見極めを誤ったFRB

 伊藤忠総研の作成する新年の世界経済見通しでは、その年に見込まれるリスク要因を幾つか挙げることにしているが、今年は「物価動向と金融政策」をその筆頭とした(※)

 米連邦準備理事会(FRB)は、2021年12月の連邦公開市場委員会(FOMC=金融政策を決める会合)で、それまで「一時的」としていた物価上昇についての判断を撤回、2022年4~6月期には利上げを開始する可能性を示唆したが、なかなか収まらない物価上昇と、それに対する中央銀行の判断ミス、さらには物価動向や金融政策を巡る市場の思惑で大きく動く株価や為替相場が、コロナ禍を脱しつつあった世界経済の大きなリスクになると考えたからである。

 昨年来のFRBによる物価の判断を振り返ると、消費者物価は2021年3月に前年同月比で2%を超え、5月には5%に達したが、FRBは物価上昇がコロナによる供給制約・人手不足による一時的なものだとし、金融緩和を継続した。その後、消費者物価は9月まで5%台の伸びで足踏みしピークアウトも期待されたが、10月以降は再び上昇が加速、上記の軌道修正に至った。

 金融政策において、物価上昇を追いかける形での利上げは「ビハインド・ザ・カーブ」と呼ばれ、今回のような超金融緩和の出口戦略では、資産価格の急落すなわちバブル崩壊を避ける一つの有効な手段となり得るが、対応が遅れ過ぎるとインフレや資産バブルという副作用が強く出てしまう。今回、FRBはその見極めを誤ったといえるだろう。

(※)2021年12月27日付Economic Monitor「2022 年の世界経済見通し:依然としてリスク要因は多いが、脱コロナを実現し経済正常化がメインシナリオ」