
武田 淳
有権者数が9億人を超え世界最大の選挙となるインド連邦議会議員選挙が6月4日に開票された。結果は、モディ首相率いるインド人民党(BJP)を中核とする与党連合が293議席を獲得、定数543の過半数を確保した。同日、モディ首相は勝利宣言を行い、政権3期目の5年がスタートすることになる。

今年は「選挙イヤー」とされ、11月の米国大統領選まで毎月のように主要各国で重要な選挙が続く。その先陣を切って1月13日、台湾で国家元首に当たる「総統」の選挙が行われた。結果は、直前の世論調査通り、与党民進党(民主進歩党)の頼清徳氏が勝利し、その意味では波乱のない順当な結果であった。ただ、より詳細に見れば、台湾が直面する内政と外交上の課題を浮き彫りにした結果だともいえる。

3月中旬、コロナ明け初の米国出張としてワシントンDCを訪れた。その際、現地ではトランプ前大統領が自身で「21日に逮捕される」と発信したことが話題になっていたが、筆者のみならず現地のスタッフも話半分として聞き流していた。ところが、ニューヨーク州の大陪審が3月30日、トランプ前大統領を起訴、それが半ば現実となった。

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3月16日から2日間の日程で訪日し、岸田首相と会談する。日韓首脳会談は昨年11月のカンボジア以来であり、韓国大統領の来日となれば、まだ就任1年後だった文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の2018年5月以来、約5年ぶりとなる。

10月22日の共産党大会閉幕から半月あまりが過ぎ、中国の新体制に対する評価は概ね出尽くしたようであるが、最も多いのは「習近平国家主席の独裁体制強化」との見方であろう。その根拠を並べると、まずはチャイナ・セブンと呼ばれる最高指導部(政治局常務委員)の68歳未満という定年を破り、自身の総書記3期目を実現したことである。

伊藤忠総研の作成する新年の世界経済見通しでは、その年に見込まれるリスク要因を幾つか挙げることにしているが、今年は「物価動向と金融政策」をその筆頭とした。

日経平均株価が約31年ぶりの最高値を付けた。企業業績の上方修正や新政権への経済政策への期待が追い風になっているが、折から中国不動産大手の経営危機が表面化した。「死角」はないのか。

米国経済はワクチン接種の進捗から今年は6%台の高成長が予想される。だが物価上昇が加速し急激な引き締めを迫られたり、超金融緩和が続き株価が本物のバブル相場となるリスクを抱える。

20日に発足するバイデン新政権は当面はコロナ対策に注力するが、追加経済対策や目玉の環境・インフラ投資は「トランプ弾劾」で与野党の綱引きが展開される議会との調整が必要だ。順調に船出できるかは見通せない。

NYダウが3万ドルを突破したが、材料になっているコロナワクチンの接種開始やバイデン新政権の追加経済対策は期待先行で現状では実効性に乏しい。感染拡大による経済回復鈍化や超金融緩和を考えるとバブル化の懸念が強い。

「バイデン新政権」ではコロナ感染抑制が重視される上、増税やインフラ関連投資、医療保険拡充などの公約の実施は当面、限定されそうだ。景気回復には時間がかかり割高の株価はいずれ調整が見込まれる。

米国の株価が再び急落しているのは、新型コロナ問題での行動制限緩和を機に、過剰な業績回復期待から株価上昇が行き過ぎた調整だ。過去5年の株価収益率で見ると、米国株価はなお割高で今後も調整の余地が残る。

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、消費落ち込みやサプライチェーン寸断による生産減少だけでなく金融市場に波及した。世界の株式市場は総崩れとなり、為替市場では円が急伸する。リーマンショックをほうふつさせる状況だ。
