コロナ,治療薬,がんPhoto:PIXTA

 実験段階のがん治療薬sabizabulinが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の中等症~重症患者の死亡リスクを約55%低減する可能性のあることが、新たな研究で示された。研究グループは、「この効果は、これまでに承認された薬剤を上回るものだ」と話している。Sabizabulinの開発企業であるVeru社は、米食品医薬品局(FDA)に同薬の緊急使用許可(EUA)を申請しており、承認されれば入院患者の治療選択肢の増加につながる。Veru社のK. Gary Barnette氏らが実施したこの研究結果の詳細は、「NEJM Evidence」に7月6日掲載された。

 Sabizabulinは経口の微小管阻害薬で、細胞分裂の際に主要な役割を担う微小管を構成するタンパク質であるチューブリンに結合して、微小管形成を阻害することで効果を発揮する。もともとは、腫瘍細胞間のアクセスを遮断することにより腫瘍の増殖を遅らせるがん治療薬として、米テネシー大学の研究グループにより開発された。しかしこの薬剤が、生命に関わる肺の炎症を軽減させることによりCOVID-19患者にも効果を発揮する可能性があるのだという。

 今回の研究では、中等症~重症のCOVID-19により入院し、酸素投与や人工呼吸器による治療を要する患者204人を、最長で21日間、sabizabulinを毎日9mg投与する群(134人)とプラセボを投与する群(70人)にランダムに割り付けて、60日後までの全死亡率を比較した。対象者は、喘息や重度の肥満、高血圧など、死亡リスクを高める他のリスク因子を有していた。