利益は最終的に誰のものになるのか
ここで、損益計算書を見てみましょう。
損益計算書(PL)は、一定期間内にどのようにお金が出入りし、いくら残ったのかを示すものです【図3】。
まず売上高から、材料などの仕入れにかかったお金(売上原価)を差し引いたものが「売上総利益(粗利)」です。そこから人件費や家賃、広告宣伝費などの「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いたものが「営業利益」。そこに受け取る利息や融資を受けている銀行に払う利息など「営業外収益」と「営業外費用」を加味したものが「経常利益」で、さらに不動産の売却などで臨時に発生した損益(「特別利益」と「特別損失」)を加味すると「税引前当期純利益」となります。そこから法人税などの税金を支払って残るのが「税引後当期純利益(純利益、最終利益)」です。
この流れを見ると、企業が取引先や従業員、金融機関、国や地方公共団体などのステークホルダーに対して代金、給料、賃料、利息、税金などの「支払うべきもの」を払い、最後に残るのが「当期純利益」だということがわかります。
そして、この「当期純利益」は誰のものかといえば、これはすべて「株主の利益」なのです。
「当期純利益はすべて株主の利益」と言われても、ピンと来ない人もいるかもしれません。
実際には、残った利益の使い方については、企業が3つの選択肢から選ぶことができます。
1つは、配当を出してダイレクトに株主に返すこと。2つめは、さらなる成長のために設備などに投資をすること。3つめは、将来に備えて「内部留保」としてバランスシートに残しておくことです。
しかしこれら3つの選択肢のどれを選んでも、最終的には株主に返すことになります。
投資をして成長すればそれによって拡大した利益は株主のものになりますし、内部留保が積み上がりすぎれば、株主は「ちゃんと私たちのお金を返してほしい」「もっと私たちのお金を有効に使ってほしい」と主張します。
近年のガバナンス革命というのは、内部留保を溜め込む企業に対する株主の怒りによって起きているともいえるでしょう。
(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)