ロシア産天然ガスの欧州への供給が細る中、米国産天然ガスを巡って同盟国の間で世界的な争奪戦が起きており、米国が需要の急増に対応できるかが試されている。
ウクライナに侵攻したロシアに欧州が一連の制裁を科したことで、ロシアは欧州への天然ガス供給を絞った。これを受け、欧州は米国をはじめとする代替調達先の確保に急いだ。調査会社ライスタッド・エナジーによると、欧州は3~6月に米国からの液化天然ガス(LNG)輸入量が前年同期の2倍超となった。
ロシアは21日、同国と欧州を結ぶ主要ガスパイプライン「ノルドストリーム」を通じた天然ガス供給を再開したが、その量は絞られている。だが欧州首脳の多くは、ロシアが年内にガス輸出を完全にストップし、欧州の米国産ガスへの依存度がさらに高まることを不安視している。
米国産ガスに対する欧州の需要の高まりにより、国際LNG市場は様変わりしつつある。アジアなどの地域向けの貨物が、より高値で売れる欧州に振り向けられているためだ。一方で、石炭・石油から天然ガスへの移行を予定していた一部の発展途上国は、LNG市場で買い負けしている。
米国にとっては、LNG取引の急増により、エネルギー輸出の地政学的・経済的手段としての重要性が高まったほか、貿易収支が調整され、敵対国に対抗する上での自由度が増したと、エネルギー会社幹部や政府高官は述べている。