食費は少し前の2倍に近い値上がりぶり

 冒頭の参鶏湯のように、「安い」とされていた韓国の外食費はここ数年で値上がりを続けている。例えば、韓国式中華のジャジャン麺やチャンポン、冷麺やカルグクスといった麺料理はこれまで、日本の「ワンコイン」のような感覚で日本円で500円前後で食べられていた。しかしこちらも以前からのインフレに加え、コロナ禍の影響や、最近の小麦粉の高騰などにより、値上がりが止まらない。ソウルでは、1万ウォン(約1050円)を超える店も出ている。

 これにより、会社員たちの昼食事情も厳しいものになっている。レストランに食べに行く代わりに、コンビニのおにぎりやカップラーメンで済ませたり、さらには手作りの弁当を持参したりするケースも増えているとのことだ。

 客ばかりではなく、飲食店を経営する側も厳しい。人件費のアップに加えて、原材料の上昇により、少ない人数で店を回したり、規模が小さい食堂やカフェは主人がほぼ一人で切り盛りせざるをえない場合もあり、廃業をする飲食店も多くなっている。

 最近の物価の高騰は世界的な傾向であり、しばしば話題になるのがニューヨークの物価高だ。ニューヨークとの単純比較はできないものの、ソウルでも物価高に加え、一昨年からの異常なまでの不動産の高騰が生活を圧迫している。

ソウル暮らしの夢はどんどん遠のく

 韓国では地方からソウルの大学に入ることを「イン・ソウル」といい、ソウルにある大学に進学することがステータスとされている。このため、受験生達はソウルの大学を目指して必死に勉強をする訳であるが、現実問題として地方出身者が実家を出て一人暮らしでソウルの大学に行くのは親にとっても大きな経済的負担となっている。ある地方都市に住む大学生の親は「ソウルの大学は確かに地方と比べればレベルが高いから目指すけど、ソウルでの家賃や生活費の仕送りを考えたら、子どもが地元の大学に進学してくれて正直、ホッとしている」と言っていた。韓国では子どもの教育への投資を惜しみなくするものであるが、やはり、不動産の高騰と物価高は学生の親にとってもダブルパンチと言えよう。