ペロシ氏訪台、アジア政治リスクの転換点にPhoto:Annabelle Chih/gettyimages

――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問し去っていった。その後、中国のミサイルが台湾上空を通過し、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」は議論沸騰で一時停止、中国軍は台湾海峡周辺で過去数十年の中で最大規模の軍事演習を実施した。一方、台湾の人たちにとっては、ほとんど非現実的に感じられる生活が続いている。

 市場の反応は大きかったが、壊滅的とまではいかなかった。米10年債利回りはペロシ氏の台湾到着前、投資家が逃避買いに走ったため4カ月ぶりの低水準に落ち込んだが、同氏が無事に到着すると急上昇した。2日に大きく下げた台湾の主要株式指数はそれ以降、下落分を全て取り戻している。中国の半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)の株価もペロシ氏の訪台前は下落していたが、同氏が台湾に到着し中国が軍事演習を発表してから15%上昇した。S&P航空宇宙・防衛セレクトインダストリーインデックスはペロシ氏が訪台を計画していると初めて報じられた7月18日以降、9%上昇している。これはS&P500種指数の8%上昇を上回る。

 こうした市場の動きは相当なものだが、真の重要性を反映してはいない。