今期最高益となる東海旅客鉄道。かつては5.4兆円あった莫大な借金の圧縮が効いている。手にした利益を元手にリニア計画に邁進するが、新たに9兆円という建設負担に耐えられるのか。

 東海旅客鉄道(JR東海)の経常利益が今期(2012年度)、初めて3000億円の大台に乗る見通しとなった(図1)。

 増益の背景には、もちろん本業の運輸収入の伸びがある。今期は特に、11年3月に発生した東日本大震災で減少した利用客が戻ってきたことや、東京スカイツリーの開業で観光需要が喚起されたことがプラスに働いた。12年4~9月の東海道新幹線輸送量は前年同期比9.1%増となった。

 外部要因だけではない。過去のサービス強化策も貢献している。

 JR東海は“東海道新幹線の会社”といっていい。

 売上高のうち運輸業の占める割合は78%、営業利益では92%にも上る(11年度)。同じ国鉄から分社された東日本旅客鉄道(JR東日本)が売上高の25%、営業利益の28%を小売・流通業で稼ぎ出しているのとは対照的だ。

 ゆえにJR東海は、「東海道新幹線に投資を集中させてサービスを磨き上げてきた」(藤井秀則・JR東海常務執行役員財務部長)。

 代表例が、それまでの「ひかり」より速い「のぞみ」の投入と、新幹線品川駅の開業だ。

 図1では、のぞみの1時間当たりの最大運転本数が増えるのに伴い運輸収入が右肩上がりに伸びてきたのが見て取れる。08年のリーマンショック時には落ち込んだが、東日本大震災を経てもなお伸び続けている。さらに13年度には、新大阪駅の改良で1時間に最大で10本の運転が可能になる。